酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
宮西尚生とJFK、澤村拓一と「日米球界ホールド事情」 実はセットアッパーの地位って…MLBよりNPBの方が高い?
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News/Getty Images
posted2021/05/24 17:02
宮西尚生と澤村拓一。ここ10年の日本野球を見ていた人にとってはお馴染みのリリーフ投手だ
今では各球団にクローザーがいて、毎年30以上のセーブを記録している。
「セーブ制導入以前にも、今のルールでカウントすれば、すごいセーブ数を上げた救援投手がいるんじゃないか?」
こう思う人がいるかもしれないが、そうではない。唯一の例外は、1965年巨人の宮田征典。この年の宮田は「8時半の男」と呼ばれ終盤に登板し、試合を締めくくっていた。今のルールに換算すれば22セーブを挙げた。たまたま宮田の起用法が「セーブシチュエーション」と重なっていたのだ。
しかし、その当時の代表的な救援投手である中日の板東英二でも、最多セーブは1965年、66年の11セーブだった。
日米でホールドのルールは若干違う
セーブの概念がない時代でも、監督はある程度の役割分担をして投手を起用していた。ただ、当たり前の話ではあるが、セーブシチュエーションを狙って投手を起用することはあり得ないのだ。セーブを稼ぐポジションの投手=クローザーは、セーブ制度ができたことで誕生したわけなのである。
これはホールドも同様だ。
ホールドはセーブとよく似ている。「リードが3点差以内、または同点で救援登板した投手が、そのリードを保ったまま次の投手に引き継いだ」場合などに与えられる。セーブとの違いは、最終の投手ではなく「中継ぎ」投手であることだ。またホールドは、この条件を満たせば同じ試合で複数の投手につくこともある。
実は、日米でホールドのルールは、若干違っている。
NPBでは同点で登板し、これをキープしてもホールドがつくが、MLBでは同点で登板してもホールドはつかない。
ホールドのつくシチュエーション、つまり僅差のリード時(NPBでは同点時も)に登板する投手を「セットアッパー(アメリカでは「セットアップマン」)」とよぶ。
その価値を大きく引き上げた「JFK」トリオ
これまで中継ぎ投手は、「先発やクローザーを失格になった投手」という印象があった。「中継ぎ降格」という言葉さえあったくらいだ。
しかし2005年に「ホールド」が導入されてから、セットアッパーはクローザーと同様、試合のカギを握る重要なポジションになった。
大きかったのはホールドが導入された2005年に「JFK」が登場したことだろう。