酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
宮西尚生とJFK、澤村拓一と「日米球界ホールド事情」 実はセットアッパーの地位って…MLBよりNPBの方が高い?
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News/Getty Images
posted2021/05/24 17:02
宮西尚生と澤村拓一。ここ10年の日本野球を見ていた人にとってはお馴染みのリリーフ投手だ
オリックス復帰の平野も32Hを記録したが
オリックスからMLBに移籍した平野佳寿は、移籍1年目にダイヤモンドバックスで32ホールドを記録した。これはダイヤモンドバックスのブラッドリー、ロッキーズのオッタビーノの34ホールドに次ぐリーグ3番目の好成績だったが、それほど話題にはならなかった。
MLBでもトップクラスのクローザーはスター選手だ。MLB最多の652セーブのマリアノ・リベラやこれに次ぐ601セーブのトレバー・ホフマンは殿堂入りしているが、セットアップマン(日本で言うセットアッパー)のステイタスは低く、年俸も安い。
先発投手の球数は厳格に管理しているが、セットアップマンは実質的に使い捨てのようになっている。なぜそうなのかはよくわからないが、短期的にせよセットアップマンが務まる投手がMLBにはたくさんいることが原因かもしれない。
澤村、そして宮西の現状は?
今季からレッドソックスの澤村拓一は、5月22日時点で15試合に登板し1勝0敗2ホールドを上げている。だんだんにホールドがつくような状況を任されるようになった。しかし、成績が落ちれば、平野佳寿がそうだったように、厳しい立場に置かれるだろう。
セットアッパー(セットアップマン)に関しては、日本の方がステイタスは高いといえるのだ。
ホールドが導入されてわずか17シーズンだが、日本ハムの宮西尚生は、セットアッパーの頂点に立っている。
180cm80kgとがっちりした体格の宮西は、左ひじをぐいっと引き上げて、ずばっと切れのある速球を内角に投げ込む。切れ味鋭いスライダーも武器だ。優秀な救援投手はみんなそうだが、宮西がマウンドに上がると相手打線に何となく「あきらめムード」のようなものが漂ったものだ。
昨年、日本ハムはクローザーの秋吉亮が不振に陥ったため、シーズン中盤の9月14日から宮西をクローザーに起用した。それまで13年のキャリアで宮西は3つしかセーブを記録していない。宮西はセーブこそ挙げたものの、9月14日、15日と2試合連続で失点した。クローザーとセットアッパーはよく似た仕事のように見えるが、宮西のレベルになれば厳然たる違いがあったのだろう。
今季は再びセットアッパーに戻った宮西だが、開幕から苦戦している。6ホールドこそ挙げているが、4月8日、20日、25日と救援に失敗した。