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【独占】“ワンダーキッド”オーウェンが追悼する名将ウリエ…「ジェラードもキャラガーも同じ気持ちのはず」と言うワケ
text by
フィリップ・オクレールPhilippe Auclair
photograph byGetty Images
posted2021/05/15 17:02
昨年末に他界したウリエ。オーウェンは彼の下で育った逸材だ
特に僕の両親、母さんなんて物凄く落ち込んでいた。ジェラールが、そこまで選手の家族とも距離の近い監督だったことに初めて気づかされたよ。確かに、家族にも気を配る人ではあったけどね。僕の妻はもちろん、両親や2人の兄貴、姉さんや妹のことまで知っていたんだ。
試合後、スタジアムの選手用ラウンジで家族と顔を合わせるときにしても、普通なら形式的な軽い挨拶で済ませる監督が多いが、ジェラールは「ハウ・アー・ユー?」の一言にも気持ちがこもっていた。選手の家族全員と打ち解けて話をして、心の底からケアしてくれた。
本当のジェントルマンだった
本当のジェントルマンだった。ジェラールのリバプール時代に選手としてバロンドールを受賞したり、タイトルを獲得したりした嬉しさは一生忘れないけど、1人の人間として、2、3年前に体からオーラみたいに親愛の情を発散するジェラールと再会できたときの喜びも絶対に忘れることはない。
共有した記憶が次々に蘇ってきて、久しぶりに親友と再会したような感覚だったんだ。それは僕に限らず、当時のチームメイトたちも同じはずさ。ジェイミー・キャラガーにしても、スティーブン・ジェラードにしても、ジェラールには同じような気持ちでいると思う。監督と選手の関係を超えた絆で結ばれていたんだ。
本人がその気になれば、サッカー以外の分野でもきっと成功を収められたと思う。集団を率いる立場に立つべき人だった。選手たちの意欲を掻き立て、チームスピリットを生み出すことが上手い。明確なビジョンを持って先頭に立ちながら、各自の持ち味を理解して力を引き出せる。そして、彼自身がチーム随一のハードワーカーでもあった。どの世界にいたとしても、ついて行きたいと思わせるリーダーだったんだ。
ウリエがオーウェンに教えたこととは
ジェラールは、サッカーの世界でプロ選手としての経験があったわけじゃない。だから、トップレベルでプレーした者にしかわからない、微妙な感覚を知っていたわけではない。
例えば、ゴール前での感覚は僕の専門領域。ボックス内で生きたことのない人たちから、とやかく言われる筋合いはない。ジェラールはそこをわきまえたうえで、僕が得点感覚を発揮できる状況に身を置けるよう、必要な動きやポジショニングを自然と身につけられるセッションを練習で組んでくれた。