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通信制高校→米国留学で肩を壊し帰国→国立大で税理士の勉強と並行して野球… 26歳145km右腕が無謀でもメジャーを目指す理由 

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清水岳志

清水岳志Takeshi Shimizu

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photograph byTakeshi Shimizu

posted2021/05/17 11:00

通信制高校→米国留学で肩を壊し帰国→国立大で税理士の勉強と並行して野球… 26歳145km右腕が無謀でもメジャーを目指す理由<Number Web> photograph by Takeshi Shimizu

紆余曲折の野球人・広重怜。彼のピッチングはどこまで通用するか

「ほんとは体の使い方と出力が一緒にあがっていかないといけない。アメリカでは出力だけ、スピードだけ上がっていっちゃったので、肩を壊した。経験をたくさんしてきて、そこに構築してきた自分なりの理論がある。年月が長いだけ、いろんな知識は詰めてきました」

 また、メンタル面でもレベルの差を感じることは多いという。

「自分も無観客の神宮で投げましたけど、プロのプレッシャーは半端ないと思いました。スピードガンがあるだけで気負ってた。2イニングだけでも翌日、すごく疲れていました。あそこで何万人の観客がいて、人間関係もあって、なんて度胸のある人間だろうなと。

 18歳の頃は怖いもの知らずで、アメリカなんて大したことないと思っちゃった(笑)。でも、今は経験していろんな世界を知ったので、怖さや慎重さもある」

 その一方でこの春、腰痛を発症。3日間で接骨院に8回ぐらい行くほどだった。アメリカから帰国後、学費を貯めるために飲食店でバイトしていたのだが、朝の9時から夜の1時という激務で腰を酷使したのだという。リーグ戦では鎮痛剤を飲んで、騙し騙しやっているそうだ。

3つ星のグラブに込められたこだわり

 そんな広重は使っているグラブにもこだわりを持っている。

 日本より先行するアメリカで道具の研究もしたい――というのは、18歳で渡米した理由の1つでもある。

 今、使っているのは3つの星の刺繍を入れた特注品。昨秋リーグ戦の最多勝、防御率、三振のタイトルの記念だ。それ以上に重要な秘密がある。それはグラブの硬さ。それだけでパフォーマンスの違いが出てくるというのだ。

「親指は硬く中指、薬指、小指の3本は柔らかい状態がいいんです。その3本が柔らかいと逆の手の右手のリリースで力が入るんです。また親指が柔らかいと変化球を投げるときに回転を与えられなかったり、微妙な力学があります。道具で自分の動きを制限されたくない。重いなと思って投げるより、何も意識しない方がリラックスできる。この部分だけでも他の人に先んじたい」

 彼の投球の特徴は回転数の多いところだ。その辺りのデータは興味を持って分析してきた。ストレートのスピン量はプロの平均が2200回転で、メジャーが2300ぐらいあるという。広重は2450から2520ぐらいなのだそうだ。今シーズン、ドラフト候補の法大・三浦銀二投手を引き合いに出した。

「三浦は平均の回転数が2500でほぼ一緒ですが、スピードの平均で僕が2、3キロ劣る。向こうはコントロールもいいので」

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広重怜
埼玉大学

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