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通信制高校→米国留学で肩を壊し帰国→国立大で税理士の勉強と並行して野球… 26歳145km右腕が無謀でもメジャーを目指す理由
text by
清水岳志Takeshi Shimizu
photograph byTakeshi Shimizu
posted2021/05/17 11:00
紆余曲折の野球人・広重怜。彼のピッチングはどこまで通用するか
ハードな環境を楽しむ
広重は今、経済学部の3年生である。年齢層は30、40歳代の人も多く、70歳の人もいるという。授業は6限、7限。勤務後の18時から21時の間に講義を受ける。入部した埼玉大の野球部は強くない。それでもアメリカ帰りのピッチャーが引っ張ることで、チームに化学反応が起きているようだ。
「やるせなさはある。でも僕が突き抜ければ、ついてくるやつはいるかなと。キャッチャーが最初はカットボールが取れなくて、パスボールが1試合で数回あった。それでも今はブロッキングからキャッチングもすごく、うまくなってます」
埼玉大は関甲新学生野球連盟の2部に所属する。部員は約40人弱。去年の春はコロナ禍で公式戦が中止になったものの、秋はリーグ戦を開催した。
1年秋から先発を任され、エース格となった。さいたま市桜区の大学敷地内のグラウンドの外野は雑草が5センチほど伸びているし、フェンスがないので開放感が漂う。学生監督中心、練習は和気あいあいで草野球の雰囲気がある。難儀なのは六大学、東都と違って千葉、茨城、群馬、長野など地方球場開催が多いことだ。
「車を運転していくんですが、それだけで疲れる」
例えば、昨秋の優勝決定戦は松本大とのアウェー戦だった。
「200キロ以上のドライブです。右足でアクセルをずっと踏んでいたんですが、左足の付け根で踏ん張っていたのか。経験したことのない部分が痙攣した」
また、当日の車移動はアクシデントに見舞われることもあったという。広重はそれすらも楽しんでいる様子だ。
「数台のレンタカーで相乗りするんですが、事故渋滞に巻き込まれてアタフタしたことがあります。先に到着した控えメンバーでプレーボールして、レギュラーが到着して3回から総入れ替えしました。
でも、ハードな環境で逆に鍛えられています(笑)。大学に入っての成長度が大きい。頭がいいのでヒントを出せば技術も勝手に上手くなっています」
肌で感じたプロの世界との差
広重にとってアメリカの野球に肌で触れたことは強みなのだろう。家から車で30分のところにバッファロー・バイソンズというブルージェイズ傘下の3Aチームの本拠があった。川崎宗則がいて、よく見に行った。守備は通用するがパワーが他の選手と3ランクぐらい違った。
とはいえ、アメリカの指導法が全ていいかというと、違うとも感じている。