ファイターズ広報、記す。BACK NUMBER
ファイターズでは“プロスカウト”と呼ぶスコアラーという仕事、その孤独な舞台裏とは? 試合終了後に午前3時すぎまで作業
text by
高山通史Michifumi Takayama
photograph bySankei Shimbun
posted2021/05/11 06:00
現役時代の石本努氏。現在は日本ハムでプロスカウト(スコアラー)としてチームを支えている
北海道日本ハムファイターズは開幕から3人が、その特命を遂行している。「先」と「先々」と、チームへ合流する「チーム担当」で区分。ベースとしては「先々」→「先」→「チーム担当」のサイクルで、持ち場が変わる。それを1シーズン、繰り返すのである。「チーム担当」に当たれば、3連戦であれば3日間だけ一軍へと合流。その時に、常時同行している「チーム付き」とともに膝を突き合わせて傾向等のデータ、チームへと提案する戦略、ゲームプランを仕上げるのである。
その1人が、石本努プロスカウトである。
1990年のドラフト2位で日本ハムファイターズへ入団。2004年に本拠地移転で誕生した北海道日本ハムファイターズでも現役で、俊足巧打の外野手として活躍していた。
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ここからは余談である。OBのエンターテイナー新庄剛志氏の有名パフォーマンスの1つ、同年の「秘密戦隊ゴレンジャー」の被り物でのシートノック。石本氏は「モモレンジャー」だった。一本気な九州男児の変身した姿に当時、驚いたことを思い出す。
「気にはなっても(試合を)見ることはない」
現役引退後は「チーム付き」を7年間務めて、「先」と「先々」などへと配置転換されて今シーズンで5年目になる。ライフスタイルは過酷で、孤独を極めている。午後6時開始のナイターの偵察時を、一例に挙げる。石本スカウトの生活パターンである。
試合開始1時間前、午後5時をメドに球場入りする。試合開始から試合終了まで漏らすことなく一投一打を、くまなくチェックして記録する。また出場した選手の調子の動向やプレー、ベンチワークなども自身の感性を生かして確認する。同時刻にファイターズが試合をしていても「気にはなっても、まったく見ることはないですね」という。
試合終了後、宿泊先へ投宿。軽食で空腹を満たし、入浴を済ませてから作業を始めるのがルーティンとなっている。一軍本隊へと供給するデータの入力や整理。1試合分とはいえ膨大で間違いが許されない処理を、たった1人で行うのである。石本スカウトの場合、午前3時過ぎまでかかることが多いという。ビデオで撮影した動画、投手は球種と配球、打者も球種やコースによっての対応など多岐に渡る。個人差はあるが、ほかの自軍スカウトもほぼ同じような時間帯まで試合後、データ処理をしているという。
一段落したところで就寝し、起床してから再び作業をスタート。漏れ、記録ミスなどの確認を完了してからは「試合に集中できるように」と日中に仮眠をとるそう。そして、また試合開始1時間前に球場入りをするというサイクルが「先」と「先々」では、日常だそうだ。