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「あいつにはパスを出すな」チーム内の批判を覆して… “殺気が消えた”20歳ビニシウスがマドリーで輝いている理由

posted2021/04/18 17:01

 
「あいつにはパスを出すな」チーム内の批判を覆して… “殺気が消えた”20歳ビニシウスがマドリーで輝いている理由<Number Web> photograph by Getty Images

リーグ戦ではバルセロナとの“エル・クラシコ”を制し、CLではリバプールを下して準決勝進出。いまや2冠獲得も視野に入る中、その上昇気流を牽引しているのがビニシウス・ジュニオールだ

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吉田治良

吉田治良Jiro Yoshida

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 先日、ドリブルデザイナーの岡部将和さんに取材をさせていただく機会があったので、こんな質問をしてみた。

「50歳を過ぎたオジサンでも、ドリブルは上手くなれますか?」

ドリブルの極意とは

 ネイマールなど世界の名だたるプレーヤーたちとYouTubeでコラボを果たしているドリブル専門の指導者は、腰痛持ちの中年フットサル愛好家に、優しくこう教えてくれた。

「ドリブルって、相手と同じ時間を共有しなければ抜けるんです。その術として、緩急があるんですね。若い時は速い動きをもっと速くして緩急をつけようとしがちですが、遅いものをより遅くしてもいいわけです。あえて答えを出さない時間を作るというか。ただそれって、ある程度の人生経験がないと難しいんですね。行くぞって殺気を出しているうちは、それはできません」

 その言葉を聞いて頭に浮かんだのが、レアル・マドリーのビニシウス・ジュニオールだった。

 ほんの少し前までの彼は、それこそ全身から立ち上る殺気を隠そうともしないドリブラーだったからだ。

2018年、マドリーに加わった「ニューネイマール」

 フラメンゴの下部組織で頭角を現わし、2017年のU-17南米選手権で得点王とMVPをダブル受賞。「ニューネイマール」とも呼ばれた超逸材は、翌18年5月に違約金4600万ユーロ(約59億円)でマドリーとの契約合意に至ると、その2カ月後、18歳の誕生日を待って晴れて白い巨人の一員となった。

 迎えた18-19シーズンの開幕当初はBチームのカスティージャでプレーしていたが、2部B(実質3部)では格の違いが明らかで、早々にトップチームへ昇格することとなる。

自慢の高速ドリブルで左サイドを切り裂いた18歳の俊英は、2度の監督交代劇(ジュレン・ロペテギ→サンティアゴ・ソラーリ→ジネディーヌ・ジダン)に揺れた「今世紀最悪のシーズン」のマドリーにあって、数少ない希望の光となった。

 ただし、メディアもサポーターも、全幅の信頼を寄せていたわけではない。

「仮にマドリーが本来のレベルにあったら、はたしてあれほどの出場機会(18試合)を得られただろうか。たしかに突破力は素晴らしいが、フィニッシュのクオリティーはお粗末そのものだ(2得点)」

 2年目の19-20シーズンには、ベルギー代表のエデン・アザール、さらにひとつ年下の同胞ロドリゴが加入。激戦区となった左サイドで、ビニシウスは徐々に出場機会を減らしていく。

【次ページ】 マドリディスタの“ため息”

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