球体とリズムBACK NUMBER
“東京五輪の秘密兵器候補”がスイスで急上昇中 20歳・鈴木冬一「自分もあのレベルに…」【古巣ベルマーレ愛も】
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2021/04/12 11:01
ザンクトガレン戦でゴールを決めて喜ぶ鈴木冬一。彼が活躍して“秘密兵器”となれば、東京五輪世代はさらに分厚くなる
アシスト、2ゴールと結果を出している
そのようにして新天地に馴染んでいくと、少しずつ出場機会を得ていき、2月下旬のルガーノ戦では後半から出場し、初アシストを記録。翌23節のファドゥツ戦では、先発から再びアシストを決め、初めて試合終了までピッチに立った。以降はスタメンが続き、3月20日のザンクトガレン戦では、ついに初めてネットを揺らした──しかもいきなり2回も。
スコアが2-1の前半に、味方のFKのこぼれ球を詰めて初ゴールをマークすると、3-3と追いつかれた後半には、左サイドから相手最終ラインの裏を斜めに鋭く突き、味方のスルーパスを呼び込んでシュートを沈めた。これが決勝点となり、チームに3試合ぶりの白星をもたらしている。
「先発で出してもらえるようになったのは、自分がチームの戦術を理解できるようになったからだと思います」と、ゆったりとした関西弁で鈴木は続ける。
「守備陣に怪我人が出たのもありましたけど、やっぱり自分のプレーができるようになってからですね。(ザンクトガレン戦の2点目の)動きだしは、練習の時に監督から言われていたことでもあるんです。それを試合で実践できて得点まで奪えたので、終わった後に監督から、『まさにあの動きだったな』と言われました。監督も嬉しそうだったし、僕も嬉しかった。信頼度も少しは上がったのかなと思います」
湘南の頃と布陣とポジションが一緒なのでやりやすい
さらに、続くルツァーン戦でも決勝点をアシスト。大阪や長崎、そして神奈川で磨き続けてきた左足は、スイスでも十分に通用する大きな武器だ。また日本で学んだことを、しっかりと今につなげている。
「まず、(湘南の頃と)フォーメーション(3-5-2)とポジション(左ウイングバック)が同じなので、やりやすいです。自分もそこが最適なポジションだと思っているし、特長も出しやすいですね。あと、ベルマーレで色んなポジションを経験させてもらったことは、すごくよかった。攻守の切り替えの徹底や球際の競り合いなど、ベルマーレでみっちり鍛えられたので、そこも生きています。
ベルマーレもそうでしたけど、こっちも練習量は多くて、筋トレなんかも全体練習に組み込まれていますね。やっぱりこっちでは体が強くないとやっていけないんで、少しでも大きくしないとダメだなと。外国の選手は、細くても軸がしっかりしているし、体を当てるタイミングもうまい。僕は体が小さい(165センチ・61キロ)ので、自主的にも取り組んでいます」
スイスで充実の時を迎えている鈴木だが、先日の五輪代表のアルゼンチン戦には招集されなかった。当然、気になっているはずだ。