「（コロナ禍で）自分にも何かできることはないかなと考えていて、ベルマーレと相談して、TOICHIシートの設置にいたりました。僕も怪我や病気で医療関係の方々にお世話になった時、ベルマーレのファンの方がいたり、『頑張ってください』と声をかけてもらったりして。特に今の状況では、医療従事者の方々はストレスを抱えていたり、色々な理由で観戦に来るのが難しそうですよね。ほんなら僕が招待する形で、気軽にサッカーを観戦して、発散してもらえたらいいと思って」

自らを成長させてくれた古巣への思いは強い©Getty Images

　ただし、これは湘南ベルマーレだけではなく、日本のサッカー界全体を考えた上での行動でもある。

「日本のサッカー人口は増えていると思いますけど、まだまだサッカーを観たことがない人もいると思います。だからこの機会に、そうした人にサッカーの面白さを知ってもらえたら嬉しいですね。また残念ながら、スイスの試合は日本では観られないと思いますが、自分が有無を言わせぬ活躍をすれば、露出も少しは増えると思うので、頑張ります」

　欧州の地に確かな一歩を刻み始めた鈴木冬一。アルプスの空気のように澄んだ心とその特別な左足で、目の前の山々をひとつずつ乗り越えていってほしい。