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「薄底しかありませんでした」35年前の箱根駅伝ランナーが履いていた100gシューズ…東海大・両角速が“厚底”に出会った衝撃
text by
林田順子Junko Hayashida
photograph byEKIDEN News
posted2021/04/09 17:02
両角速さん(東海大陸上競技部駅伝監督)。1986年~89年まで東海大で箱根駅伝に出場している
そんななかナイキのズーム フライだけは、不思議と全然足が痛くならなかった。今まで履いたことのない感覚も新鮮でしたし、学生たちと同じような感想になってしまうのですが、やっぱりクッション性が全く違うんですね。この靴のおかげで継続的に練習を続けられるようになりました。
目標のダイエットに成功して、昨年はヴェイパーフライ ネクスト%を履いて、高根沢町元気あっぷハーフマラソン10kmにも出場しました。目指していた50歳以上の部で準優勝できただけでなく、大会記録を更新することができたのもうれしかった。
最近は忙しくて走る時間が取れず、月間走行距離は300kmがせいぜいですが、一番走っていた一昨年の8~9月の走行距離は月600kmほど。さすがに学生たちのようにポイント練習などはしませんし(笑)、今も練習はジョギングだけですが、そこまで長い距離を走り込めたのも、シューズのおかげだと思っています。
“教え子”大迫傑と直接対決したい
今は学生の方がシューズに詳しいので、僕からアドバイスをすることはほとんどありません。逆に学生たちが良いというシューズはちょっと試したくなる。自分も走り始めたことで彼らとフィーリングを共有できるようになったのは、すごく楽しいですね。自分はこのシューズがすごくいいと思っているのに、学生たちの感想は全然違っていたり、感覚の違いにも驚かされます。
さすがにトラックは走りませんが、ドラゴンフライも試しましたし、ホカオネオネも持っていますが、今は練習のジョグはテンポ ネクスト%、試合はアルファフライ ネクスト%と履き分けています。
ダイエットが成功した今、私のモチベーションになっているのは音楽ですかね。好きな曲を60分くらいに編集して、聴きながら走ったら、1時間、10kmなんてあっという間です。それに走っている時は他のことができないのもいい。これまで指導のことを考えたいと思っていても、やることが多すぎて、なかなか時間を割くことができませんでした。でもランニングをしている間は、他のことが一切できないので、指導のことをじっくりと考えられる貴重な時間になっているんです。走るようになってから、なんとなく箱根の成績も上がったのではないかと思っています。
もうひとつモチベーションになっているのは大会です。10月に行われる次の東京マラソンは、さすがに駅伝シーズン真っ只中で走れませんので、その次。ちょうど1年後の東京マラソンでサブ3を出すのが、今の私の目標です。本当は昨年の東京マラソンで、教え子である大迫傑と対決をしたかったんですけど、本人に「対決だ!」と言ったら、無反応でスルーされましたね(笑)。
54歳になりましたから、ときには走るのがしんどい時もあります。それでも今の私にとっては、走る時間は何よりも大切なものになっていますね。
両角速(もろずみ・はやし)
東海大学陸上競技部駅伝監督。1966年7月5日生まれ。85年東海大入学。在学中に箱根駅伝に4年連続で出場。89年卒業後、日産自動車に。93年にダイエー入社。95年佐久長聖高駅伝部監督に就任。2011年より現職