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井上潮音、初J1&ヴィッセル神戸移籍の裏にある決断「イニエスタを超えろ」東京V永井監督の言葉を胸に
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byVISSEL KOBE
posted2021/04/07 11:02
自身にとっても勝負の年と位置付けるJ1初挑戦のシーズン。恩師の言葉を胸に新たな舞台で躍動している
「昨年は、僕が一番怒られていた。永井さんはプレー面だけじゃなく、態度についても厳しく指摘してきた。最初は『なんで俺だけこんなに言われなきゃいけないんだよ』とふてくされた態度をとってしまって、それを受けて、また永井さんが僕を怒る。毎日、『なんでなんだよ!』と思っていました」
愛着と責任感を持ってやっているつもりだったが、もしかしたら「自分がチームの中心になる」と思いすぎたことが、練習中や周囲への態度に現れてしまっていたのかもしれない。そんな井上に対し、永井監督は厳しく接するようになった。
井上には、今も心に残る永井監督の言葉があるという。
「本当に怒ってくれる人が自分のことを本気で考えてくれる人だ。そういう人はだんだん少なくなってくるぞ」
精神的に逞しさを増した井上
振り返ってみれば、これまで自分に対してそこまで厳しい言葉を掛ける人たちはいなかった。クラブスタッフもチームメイトも、サポーターもみんな自分に対して優しかった。それは期待の表れでもあるが、居心地の良い環境に甘えていた自分がいることを思い知らされた。
その日から「変わらなきゃいけないのは僕の方だった」と、より献身的に、より攻守にかかわっていくプレーへと変わった。そんな姿勢を見た永井監督は、時には井上をメンバー外にしながらも、その成長に刺激を与え続けたのだった。
「常に悔しい、認められたいという一心で練習や試合に臨むことができた。精神的に大きく成長できた1年でした」
結果、最大の目標であったJ1昇格は達成できなかったが、この活躍が評価され、神戸から獲得のオファーが届くことになる。