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井上潮音、初J1&ヴィッセル神戸移籍の裏にある決断「イニエスタを超えろ」東京V永井監督の言葉を胸に
posted2021/04/07 11:02
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
VISSEL KOBE
現在、J1で6位につけるヴィッセル神戸(4月6日時点)。日本代表にも選出されたFW古橋亨梧や、MF山口蛍とセルジ・サンペール、絶好調のCB菊池流帆、こちらも代表初招集されたGK前川黛也という強固なセンターラインを軸に攻撃的なサッカーを展開している。
7節を終えて4勝1敗2分と好調なチームにおいて、左サイドで存在感を残しているのが東京ヴェルディから完全移籍し、今季が自身にとっても初のJ1挑戦となる井上潮音だ。
開幕戦では左サイドハーフとしてスタメン出場を飾ると、ここまでリーグ6試合に出場、うち先発は4試合。東京Vジュニア時代から磨き上げてきた足元の技術と、戦況を見極めて繰り出すパスとドリブルで“リズム”を生み出すMFは、ヴィッセル攻撃陣の中でも新たなアクセントになっている。
「試合を重ねるごとに自分の手応えは感じています。やれることとやれないこと、自分が伸ばさなければいけないところが見えてきています」
「家にいる時間よりも長くいるクラブ」
井上にとって、今回の移籍は言わずもがな大きな決断だった。
10歳で東京Vの下部組織入り。そこからジュニアユース、ユースを経て、2016年にトップチームへ昇格。プロ1年目から出番を掴むと、4年目に当たる19年シーズンからレギュラーを獲得。主軸として名門クラブを支えてきた。
その活躍ぶりから、これまでいくつも“移籍の噂”は上がってきた。さらに安西幸輝、渡辺皓太、藤本寛也ら、チームメイトや後輩らが次々とJ1や海外に挑んでいく。そんな中でも、井上はヴェルディに残り続けた。
「人生の半分以上過ごして、僕の中では家じゃないけど、家にいる時間よりも長くいるクラブ。愛着は物凄く深いんです」
もちろん、ステップアップしていく仲間たちに対して焦りを感じることもあった。それでも「チームをJ1昇格させることで、僕がこのクラブに残ったのが正解なんだという示し方もあると信じていたし、モチベーションにしていた」と、自分の信じる道を突き進んできたのだった。
そんな井上の心境に大きな変化が訪れたのは、2020年シーズン。前年の途中に永井秀樹監督が就任した。