- #1
- #2
Number ExBACK NUMBER
東大生はなぜ“監督未経験のJリーガー”にオファーを出したのか?「陵平さんにはプロの監督になって活躍してもらいたい」の真意
posted2023/05/12 17:02
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
Yuki Suenaga
元Jリーガーの林陵平氏(36歳)は現在、東京大学ア式蹴球部監督という肩書を持つが、いまや戦術に明るいサッカー解説者としての方がピンとくるかもしれない。言語化能力に長けた話し手になると、Jクラブからオファーを受ける人も少なくない。今後、林氏もその一人になる可能性は大いにある。
東大の八代快キャプテン(法学部4年)は、その現状を冷静に見つめていた。
「できることなら、陵平さんには東大で長く指揮を執ってほしいですが、このままずっと大学の監督を続けていくのは、考えにくいです。むしろ、プロの監督になって、活躍してもらいたい。ア式としても今後、良い人材を確保しやすくなりますから。S級ライセンスを取得するまでの間、最初に監督経験を積む場として、認識されるようになるといいですね」
“監督探し”も東大サッカー部の仕事
学生主体で運営するア式蹴球部は、複数のユニットを設けて活動している。監督探しは『強化ユニット』の仕事の1つ。先を見据えて強化戦略を練り、最適な人材を監督に招へいしている。林監督にオファーを出したのも学生たちだった。現役を退いたばかりで、監督業に興味を持っていそうな元Jリーガーは狙い目だという。いつ訪れるか分からないXデーに備え、リストアップは常に欠かさない。
もちろん、それなりの対価も提示する。部費だけでまかなうのは難しいため、必要な予算は自分たちで集めてくるのだ。主にスポンサー営業の役割を担うのは『プロモーションユニット』。八代もその担当を務める一人である。実際、自ら足を運んでIT系のSky株式会社に新しくスポンサーに付いてもらい、今も継続的に支援してもらうために企業担当になっている。
「現在、スポンサーは計6社。分析班の『テクニカルユニット』が使用するGPS、カメラの費用のほか、自分たちで確保した予算から監督の招へい費用も捻出しています。指導陣に関しては、当初は監督のみでしたが、プロモーション活動の活発化にしたがい、GKコーチである三浦和真氏や今年から指導していただいているスプリントコーチの秋本真吾氏など充実した指導体制を整えることができるようになりました」