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<29回1/3を0失点>東海大相模エース・石田隼都は達(天理)、畔柳(中京大中京)らと何が違ったのか?【センバツ優勝】
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKYODO
posted2021/04/01 18:25
優勝を決め石川永稀(手前)と抱き合う東海大相模のエース石田隼都。今大会29回と1/3を投げ、防御率0.00だった
「昨日までの石田のボールではなかったけど、魂のあるボールを投げてくれていた。今朝のミーティングで、今はあんまり使わないんでしょうけど、『一球入魂』と言う言葉を使った。まさにそんな投球でした」
石田の力投は、9回裏のサヨナラ勝ちを呼び込んだ。
「(甲子園は)普通の球場だった」
昨夏の交流試合、大阪桐蔭戦でも、石田は甲子園のマウンドを経験している。忘れられないシーンがあった。ピンチの場面で、石田は、ピッチャーゴロを利き手の左で捕りに行き、強烈な打球を受けた。しかし、そこから逆に火が着いたのか、唸り声を上げながらボールを投じ始め、その回を無失点で切り抜けたのだ。
試合後、石田はなんでもないような顔をして言ったものだ。
「ベンチは見ないようにしていました。見たら、代えられると思ったので」
今大会は、好投手が多いことで注目を集めた。門馬に、そんな投手たちを比べても石田が負けていないと思える部分はどこかと聞きと、こう即答した。
「ハートだと思います」
同じ質問を石田にもすると、やはりすぐに答えが返ってきた。
「強気に攻められるところです」
石田は今大会、29回と3分の1を投げ、無失点。防御率0点で甲子園を終えた。これだけ投げて、これだけ「0」を並べられた投手は他にはいない。
甲子園の感想を聞かれた石田は、平然とこう言ってのけた。
「広い球場だったと思うんですけど、普通の球場だったと思います」
魂の左腕に、湿っぽいセリフは似合わない。