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<10日間で459球>「左脇腹が痛い」達孝太は100%投げさせない…天理監督はこうして決断した【センバツ】

posted2021/03/31 17:05

 
<10日間で459球>「左脇腹が痛い」達孝太は100%投げさせない…天理監督はこうして決断した【センバツ】<Number Web> photograph by KYODO

準決勝当日の事前練習でキャッチボールする天理エース、達孝太

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中村計

中村計Kei Nakamura

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 あえて、「どうだ?」とは聞かなかった。天理の監督、中村良二は、敗れた監督とは思えないほど穏やかな表情で振り返る。

「たぶん『どうだ?』って聞いたら、行きます、って言っていたと思う。昨日の夕食の時、『(明日は)投げないよ』という話をした。本人は受け入れるような顔をして、うなずいていました」

「左脇腹が痛い」

 準決勝第1試合は、強打の東海大相模を相手に、天理の大エース・達孝太が先発するか否かが1つ目の焦点だった。

 達はここまでの3試合すべてに先発し、20日の初戦は161球、25日の2回戦は134球、29日の準々決勝は164球を投げていた。1回戦が大会2日目だったこともあり、「1週間500球」という球数制限に采配を左右される確率は低かったが、10日間で計459球もの球数を放っていた。

 異変が生じたのは、準々決勝の仙台育英戦後のことだった。達は中村に左脇腹の痛みを訴えた。達が話す。

「試合中は気づかなかった。試合が終わって、なんじゃろ、って。可能性としては、バント処理で滑ったときかな、と」

 3回表、8番打者の意表をつく三塁方向へのセーフティーバントに慌てた達は、ボールを捕球しに行った際に足を滑らせ、そのとき左手を強くグラウンドに突いた。

「今、故障しても、まったく意味がないんで」

 翌日が休養日だったため、時間的な余裕はまだあったが、中村は、その日のうちに準決勝は「達抜き」で戦うことを決めていたという。

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