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「ちょっと苦しかった」羽生結弦が今後目指すものとは?… 鍵山優真が飛躍、宇野昌磨は“新境地”に【世界フィギュア2021】
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2021/03/30 11:01
SPで首位に立ったものの、フリー4位、総合3位となった羽生結弦
「4回転半を成功させることが一番の目標」
「もしぼくが4Aを目指している状況の中に五輪というものがあれば、それは考えます。ただぼくにとって最終目標は、五輪で金メダルではなくて、4回転半を成功させることが一番の目標」
どのくらいのところにいるのかと聞かれると、「あと8分の1回れば立てる」と明言した。勝つべき試合は勝ち、取るべきメダルをすでにとった羽生にとって、唯一残っている目標は世界で誰も成功したことがない、4アクセルを公式試合で見せることなのだ。
宇野は「悔しいことは悔しいですけれど……」
宇野昌磨は、SPでは3アクセルで転倒してSP6位という位置に立った。だが転倒しても悲壮感はなく、演技終了後に苦笑いをして、一瞬アクセルに入る姿勢をさらうような動作をみせた。
「(アクセルは)リプレイで見たとき、着氷できたジャンプだったので悔しいことは悔しいですけれど、SP全体を見たときに楽しかったですし、全体的に地に足のついた良い演技だったと思います」
フリーでは4フリップなどを成功させて、総合4位まで挽回。だが表彰台を逃した悔しさはないという。
「4位という順位は決していいものではないと思うんですけど、ぼくはもっと順位より、スケーターとして、競技者として、来年以降、今回できなかったことを含め、成長の源にしたい」と先を見ている。
「一緒にゲームすることくらいですね」
シニアに上がってからずっと先輩である羽生の背中を追いかけてきた宇野も、23歳。気が付けば、後ろからは後輩の鍵山が迫ってきた。だが宇野は、激しいライバル意識を燃やす様子はない。
鍵山について聞かれると、
「めちゃくちゃうまいと思っていた。昨年のNHK杯から、ちゃんと初めて見たんですけど、本当にうまいなと……。ぼくよりジャンプも安定して、質もいい。なおかつスケーティング、表現力でシニアに入っても見劣りしない。本当にいい成績を残してて。先輩として何かできることはない」
言葉に力を込めて、若い後輩を絶賛する。
「後輩に対する思いがあるとすれば……」と言葉をちょっと切ると、少しだけ小さくなった声で「一緒にゲームすることくらいですね」と笑いを含んだ声で続けた。