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巨人・亀井善行、代打サヨナラ本塁打のウラ側 原辰徳監督はなぜ「今年こそ彼に頼らないチーム作り」を考えていたのか
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph bySankei Shimbun
posted2021/03/27 13:45
プロ野球史上初となる開幕戦での代打サヨナラホームランを放ち、コーチ陣に迎え入れられる亀井
エースに続き、クローザーまでが……
最初の想定外は先発のエース・菅野智之投手の乱調だった。
初回に打線が3点を先行したが、直後の2回には精密機械のような右腕の制球が乱れる。無死満塁から犠飛で1点を返され、なおも2死満塁から1番・桑原将志外野手に押し出し四球を与えた。
続く3回には昨年までチームメートだった田中俊太内野手に同点タイムリーを浴びてしまう。その裏に女房役の大城卓三捕手の3ランで勝ち越したが、6回を終えた時点で101球を投げて交代を余儀なくされた。
7回からは高木京介、鍵谷陽平、大竹寛と3投手を繋いで、2点差で迎えた9回には、2つ目の想定外が待っていた。
マウンドに送り出したのは原辰徳監督が今季のクローザーに指名している左腕・中川皓太投手だった。しかしこの新守護神が2死二、三塁から、またも田中に同点タイムリーを浴び、ゲームは振り出しに戻されてしまった。
亀井のサヨナラ弾も“原構想”とは違っていた?
そんな思惑違いだらけの開幕戦。
実は最後の亀井のサヨナラの一撃も、原構想という点では、ある意味、シーズン前の思惑とは少し違うものでもあったのだ。
「今年こそ亀ちゃんに頼らないチームを作らなければいけない」
今季のチーム構想を聞いたとき、亀井の話になると原監督はこんなことを語っていた。
「こう言ったら亀ちゃんに申し訳ないけど、本当ならそろそろ彼を頼りにしなくてもいいチームを作らなければいけない。若い選手が力をつけて、チームが新陳代謝していく。日々成長するためには、必要なことだから、亀ちゃんには悪いけど、彼の出番が減っていくこともチームの成長には必要なんだ。でも……」
「彼の鋭い洞察力に裏打ちされた技術っていうのは……」
困った時にはいつも亀井を頼ってきたのも、実は原監督自身でもあった。