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巨人・亀井善行、代打サヨナラ本塁打のウラ側 原辰徳監督はなぜ「今年こそ彼に頼らないチーム作り」を考えていたのか
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph bySankei Shimbun
posted2021/03/27 13:45
プロ野球史上初となる開幕戦での代打サヨナラホームランを放ち、コーチ陣に迎え入れられる亀井
「彼のベテランの力というのは、いざというときには頼りにしてしまうし、彼もそれに応えてきてくれた。彼の鋭い洞察力に裏打ちされた技術っていうのは……やっぱり頼りにしてしまう。そういう選手なんです」
亀井の出番が減ることは、一つはチームの若い選手の成長の証であるかもしれない。そういうチーム作りが今季の構想だったはずだ。ただ、そうは言っても何より亀井を頼りにしているのも、実は原監督自身だったのである。
「ベテランの鋭い洞察力に裏打ちされた技術」は、この開幕戦の打席でも十二分に発揮された。
スライダーを軸に組み立ててくるという読みがあった
打席に入る前のネクストバッターズサークル。亀井は素振りをしながらも、マウンドの三嶋の投球練習にじっと目を凝らしていた。
「投球練習からあまりストライクが入っていなかったんで、まず1ストライクまではじっくり見ようと思って打席に入りました」
案の定、初球は真っ直ぐが外角高めに大きく外れてボール。2球目のスライダーでストライクをとれたことで、スライダーを軸に組み立ててくるという読みがあった。
「ボールが速い投手なので、真っ直ぐに合わせながらスライダーをうまく拾えたというか打てました」
真っ直ぐに振り遅れないようにタイミングをとりながら、組み立ての軸になるはずと読み切ったスライダーを頭に残して待った。
「頼らないチームを作りたいと思いながら頼りにしてしまう」
球種を読み切った洞察力と真っ直ぐのタイミングで待ちながらスライダーを狙い打てる技術。まさにこれこそ原監督が「頼らないチームを作りたいと思いながら頼りにしてしまう」ベテランの力なのである。