甲子園の風BACK NUMBER
【センバツ】大会No.1右腕・小園健太、“初甲子園”を見た広島スカウトが「プロでもなかなか…」と唸ったワケ
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph bySankei Shimbun
posted2021/03/26 06:02
初戦の県岐阜商戦で完封勝利を挙げた市和歌山・小園健太。130球4安打8奪三振の快投をみせた
予想外に進化したスライダー「今日はいける」
小園は本来、ツーシームやカットボールといった変化の小さい球種を得意とし、軸にしていた。それは、いかに打者にストレートのように見せられるかが変化球の肝だと考えているからだ。小園のツーシームとカットボールは、途中まではストレートに見えて、手元で微妙に変化するから打者にとっては厄介なのだ。
その点、以前のスライダーは、少し球の軌道が膨らむ傾向があった。しかし、県岐阜商戦のスライダーは違った。
「真ん中から外のボール球に変化したスライダーで、空振りを取れた。それは、途中までまっすぐに見えているということなので、今日はいけるなと思いました」
昨秋まで自分が投げていたスライダーとはまったく違うと、小園自身も驚いたという。
「県岐阜商戦のスライダーは、たぶん、リリースの瞬間はストレートに見えて、真ん中付近から急激に曲がるような変化球になっていたと思う。そこが、空振りを結構取れた理由じゃないかなと。僕自身、スライダーがあそこまでいいと思っていませんでした。1試合であんなにスライダーを投げた経験はありません。今までの僕のスライダーの使い方は、カウントを整えたり、タイミングを外したりするためだったので、決め球としてあんなに多投したのは初めてです」
冬場に取り組んだストレート強化
特に得点圏にランナーを背負った場面では、狙って三振を取りにいった。
そのスライダーは、ストレートの強化に努めた冬場の、思わぬ副産物だった。
「秋、冬は、ストレートにフォーカスを当てて練習したんですけど、それが腕の振り抜きや指先の感覚にいい影響を与えて、スライダーもキレがよくなったんじゃないかと思います」
世代を代表する投手が、また一歩、進化を示した。
と同時に、相手打者の対応や自身の状態などによって、試合の中で自在にスタイルを変えられる引き出しの多さやクレバーさを、初の大舞台で見せつけた。
スタンドで見守ったプロのスカウト陣が評価したのもそこだった。広島の鞘師智也スカウトはこう話した。