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中京大中京のランニング本塁打「絶対、捕ってやろう」ダイビングキャッチし損ねた専大松戸レフトはあの時…【センバツ】

posted2021/03/25 15:45

 
中京大中京のランニング本塁打「絶対、捕ってやろう」ダイビングキャッチし損ねた専大松戸レフトはあの時…【センバツ】<Number Web> photograph by KYODO

7回裏、決勝の2点ランニングホームランを放ち喜ぶ中京大中京の櫛田理貴

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中村計

中村計Kei Nakamura

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 定位置より4、5メートル前、ライン側も同じくらい詰めた。

 この日の第1試合は、小雨が降る中での決戦となった。専大松戸の右サイドスロー・深沢鳳介と、中京大中京の最速151キロ右腕・畔柳亨丞の緊迫した投手戦となり、0−0のまま試合は終盤へ。

 7回裏、2アウト二塁、打席には小柄な左打者、櫛田理貴を迎えていた。専大松戸のレフト、吉岡道泰が振り返る。

「左(打者)のとき、深沢のボールだと、詰まって、ライン寄り、前のフライが多い。深沢ががんばってくれていたので、前に落とすのは絶対、嫌だった。ミーティングでも『後ろは越されてもいいから、前のフライは落とすな』と言われていた。なので、1歩目だけに集中していました。読みは当たっていたんですけど……」

「絶対、捕ってやろう」

 優勝候補の一角、東海王者の中京大中京を相手にしても、この日の専大松戸は、まったくひるんでいなかった。

 1回表、先頭打者の黒須堅心は初球のストレートを叩き、快音を響かせたが、惜しくもセンターフライ。続く2番・大森駿太朗も、やはり初球を打ち、センター前へクリーンヒット。以降も「見逃しストライク」がほとんどなかった。

 監督の持丸修一が言う。

「いいピッチャーなので、ストライクはどんどん打っていこうというのが全員の意見。1球目から、どんどん行かせました」

 その姿勢が、守備にも現れた。

 7回裏、2アウト二塁の場面。櫛田の打席の5球目、真ん中寄りストレートをはじき返した打球は、吉岡の読み通り、低い弾道でレフト方向へ。

 吉岡は迷わなかった。1歩目のスタートも完璧だった。

【次ページ】 「こみ上げてくるものがありました」

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