甲子園の風BACK NUMBER
【センバツ】大会No.1右腕・小園健太、“初甲子園”を見た広島スカウトが「プロでもなかなか…」と唸ったワケ
posted2021/03/26 06:02
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Sankei Shimbun
繊細さと大胆さ。弱気と自信。
市立和歌山のエース小園健太は、そんな両面をあわせ持った不思議な投手だ。
マウンドでの姿からは想像しづらいが、小園にはネガティブ思考な一面もあった。昨秋の和歌山大会や近畿大会では、試合が近づくにつれ、「ヤバイ」「打たれたらどうしよう」と不安を漏らすのが、まるでルーティンのようになっていた。
「試合前が一番嫌な時間なんです。試合後にタイムスリップしたいなーって、ずっと思っていました」と明かしていた。
そんな時、「大丈夫やって」「いけるって」となだめるのが、中学時代からバッテリーを組む捕手・松川虎生の役割だった。
しかしマウンドに立った瞬間、そんなネガティブ思考や不安は吹っ飛び、「変なスイッチが入って、逆に『打ってみろ!』という感じになります。マウンドに上がれば全然大丈夫」(小園)というのがお決まりの流れだった。
いつもと違ったセンバツの小園
だが、このセンバツに向けては違った。「打たれたらどうしよう」といった不安は湧いてこなかった。
いつものように「ヤバイヤバイ」と言わないなと、松川も思っていたという。
昨秋は、「甲子園に出るためには負けられない」というプレッシャーがのしかかっていたゆえの、マイナス思考だったのかもしれない。
「今回は、甲子園で悔いを残したくないので、楽しんでいこう、という気持ちで臨むことができました」と小園は言う。