とはいえ、初めて経験する甲子園。グラウンドに立つと、緊張が押し寄せてきた。

　初戦の試合開始直前、ベンチ前で整列の合図を待っていた小園は、右手を左胸に当てて、しきりにさすっていた。

「緊張して、心臓がバクバクしていました（苦笑）」

　しかも、いつもならマウンドに上がった瞬間、スイッチが切り替わるが、ここでもまた甲子園は特別だった。

「今年は甲子園練習もなくて、甲子園のマウンドというのがイメージしにくかった。最初に立った時は、自分が思っていたよりも広くて、立ち上がりはふわふわしてしまった。思ったところにコントロールしにくくて、自分の持ち味である制球力を出せませんでした」

「相手は相当、研究してきていた」

　球が上ずり、先頭打者に四球を与えた。

　それでも1、2回を無失点で切り抜けると、3回1死二、三塁のピンチで、ついにギアが上がった。県立岐阜商の2番・宇佐美佑典に対し、粘られながらもスライダーでこの日初めての三振を奪うと、3番・山本晃楓は3球三振に仕留めた。

　結果的に、小園自身記憶にないという6四球を与えるが、得点圏にランナーを進めても点を許さず、今大会初の完封でサヨナラ勝利を引き寄せた。

　3回以降、8三振を奪い要所を締められたカギは、スライダーだった。

「チェンジアップや細かい変化球を使って打たせていこうとしましたが、相手は相当研究してきていた。チェンジアップに関してはもうリリースの瞬間から打者が振る気がない印象で、手を出してくれなくて、カットボールだったり小さい変化球は逆に狙われていた場面もあったので、途中からは割り切って、大きい変化のスライダーと、ストレートを主体にして組み立てていきました」

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