JリーグPRESSBACK NUMBER
銭湯で『中村憲剛』がゲッツポーズ? 川崎とフロンターレのお風呂愛「ほかのチームなら脱がせたりしない」
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph byTakashi Kumazaki
posted2021/03/21 06:00
川崎サポーターに愛される「今井湯」。富士山に向かってゲッツポーズを決める中村憲剛を眺めていたら、ついつい長風呂したくなる
富士見湯に描かれるのは、あのシーン
さて、女湯から男湯まで連なる富士見湯の銭湯絵には、ふたりのケンゴが描かれていた。
女湯には富士山を見上げるケンゴ。男湯にはピッチにうずくまって号泣するケンゴ。後者は2017年、悲願のJ1初優勝を決めた瞬間の思い出のシーンだ。
小林さんが説明する。
「ウチは、いつも銭湯絵師の中島盛夫さんにお願いしていて、今回も中島さんに描いていただきました。ただいつもの絵とは違うので、朝8時から描き始めて通常なら夕方には終わるところ、夜10時くらいまでかかりました。スタジアムの横断幕は、実際にスタジアムで掲出をするサポーターの方々に描いていただきました」
南米やヨーロッパでは、サポーターが街角に選手の壁画を描く風習があり、私はそれらを撮ることをライフワークにしている。ついに日本にも出てきたか、と胸が熱くなる。
絵ができあがって数日後、主役のケンゴがチームスタッフとともに富士見湯にやって来た。フロンターレは過去、さまざまな銭湯企画を打ち出してきたが、だれよりも協力を惜しまなかったのがケンゴだった。彼はプレーだけではなく、ファンサービスの姿勢も仲間たちに伝えたわけだ。
ケンゴ来湯に合わせて、フロンターレと富士見湯の小林さんはサプライズを用意した。背番号と同じ14番のロッカーに、タオルや着替えを仕込み、ケンゴに開けさせたのだ。
開けた瞬間、ケンゴはすべてを悟り、文句ひとつ言わず着替えを始め、ざぶんと風呂につかった。
「あー、気持ちいい!」
このときの写真が、ケンゴ湯キャンペーンのポスターに大々的に使われることになった。