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銭湯で『中村憲剛』がゲッツポーズ? 川崎とフロンターレのお風呂愛「ほかのチームなら脱がせたりしない」
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph byTakashi Kumazaki
posted2021/03/21 06:00
川崎サポーターに愛される「今井湯」。富士山に向かってゲッツポーズを決める中村憲剛を眺めていたら、ついつい長風呂したくなる
一緒に風呂につかった星野さん
こうしたフロンターレの銭湯企画に、中心人物として長くかかわってきた関係者がいる。川崎大師に近い「寿恵弘(すえひろ)湯」の店主、星野義孝さんだ。
川崎浴場組合連合会の幹事長を務める星野さんは、ケンゴの富士見湯訪問に立ち会い、組合代表として一緒に風呂につかるという体験をした。
「実は私も、風呂に入ることになるとは思いもしませんでした。でも、ケンゴさんが“あー、なるほど。入ればいいのね”と文句も言わず、さっさと脱ぎ始めたので、私もそれならと。こういうところがフロンターレのいいところかと。ほかのチームなら、あんな実績のある選手を脱がせたりしないでしょう。仮に脱がせようとしても、選手が脱がないでしょうしね」
モダンな内装の寿恵弘湯には、銭湯絵を描くスペースはないが、ところどころにフロンターレの細工が施されている。
番台で下足箱のカギを渡すと、脱衣所のロッカーのカギが渡されるシステムで、カギにはロッカーの番号と同じ選手の似顔絵が描かれている。私はたまたま、14番が当たった。おー!ツイてるねえ。
風呂上がりにロビーでひと息ついていると、部活帰りと思われる女子高生ふたりが入ってきた。番台でカギをもらったふたりは、「私6番」、「じゃあブラジル人ね」などと盛り上がっている。
川崎の街でずっと愛されてきたのだから
朝に今井湯、午後に富士見湯、夜に寿恵弘湯と一日に3軒をはしごしたフロンターレ銭活。銭湯からチームを発信したフロンターレの発想は正しかった。
減りつつあるとはいえ、川崎市には35軒の銭湯があり、Jリーグが始まるずっと前から長く地元に愛されてきた。フロンターレは、そんな“マチのほっとステーション”と手を組むことで、地元に根ざしたチームになったのだ。
あ、最後にひとつ、今井湯・松永さんからのメッセージを。
「たくさんのお客さんに来ていただくのは大変うれしいですが、コロナ禍のいまは、みなさんには“黙浴”をお願いします。できれば少人数で、静かに入浴していただけると助かります」
銭湯絵を見上げて、ケンゴとの18年をじっくりと噛みしめてほしい。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。