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銭湯で『中村憲剛』がゲッツポーズ? 川崎とフロンターレのお風呂愛「ほかのチームなら脱がせたりしない」
posted2021/03/21 06:00
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph by
Takashi Kumazaki
私にとってJリーグ観戦は“銭活”の一環だ。
銭活とは銭湯活動。いつからかスタジアム帰りに立ち寄るようになり、味スタならこの湯、三ツ沢ならあの湯とお気に入りができていった。
Jリーグ銭活を始めて、少し気になることがある。試合が終わったばかりの時間に行っているのに、銭湯ではサッカーが話題になっていない。私はたまに関西方面でも銭活するが、あちらも同じ。ガンバもセレッソもヴィッセルもサンガもなくて、あるのは猛虎だけ。湯船や洗い場、脱衣所に小1時間もいれば、タイガースの課題を5つ、6つは挙げられるようになる。番台のおばちゃんや常連のおっさんたちが、ぼやいているからだ。
銭湯で爺さん、婆さんがぼやいてこそ。Jリーグが掲げる地域密着の理想像は、こういうものではないだろうか。
バースや掛布も描かれたことはない?
とはいえ、Jリーグも捨てたものではない。
3月3日のひな祭りの夜、等々力で大久保嘉人、レアンドロ・ダミアン、三笘薫のゴールが飛び交うフロンターレとセレッソの一戦を見届けた私は、いつものように「今井湯」に向かった。
そこには驚くべきものが待っていた。
汗を流して何気なく目線を上げると、ゲッツポーズをする中村憲剛の銭湯絵が目に飛び込んできたのだ。さらに名物の高濃度炭酸泉の壁には、ケンゴ引退セレモニーの写真の数々が飾られている。
私は勝った、とうなった。関西の銭湯にバースや掛布、球児が描かれたことがあっただろうか。
興奮した私が番台の3代目店主、松永吾朗さんにたずねると、《18年間ありがとう ケンゴ湯キャンペーン(3月9~26日)》が間もなく始まるとのことだった。フロンターレは2010年から川崎浴場組合連合会とタッグを組み、地道に『おフロんた〜れ』活動を続けてきた。ケンゴ湯も、その一環ということになる。
サンキュー・ケンゴということでキャンペーン初日となった3月9日、今井湯の朝風呂に駆けつけた私は、風呂上りに松永さんに話を聞いた。