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ついに憧れの“マーチマッドネス”の舞台へ 日本女子バスケの至宝・今野紀花が強豪ルイビル大で飛躍 

text by

青木崇

青木崇Takashi Aoki

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photograph byUniversity of Louisville Athletics

posted2021/03/18 11:02

ついに憧れの“マーチマッドネス”の舞台へ 日本女子バスケの至宝・今野紀花が強豪ルイビル大で飛躍<Number Web> photograph by University of Louisville Athletics

3月5~7日のACCトーナメントで今野は3試合全てに出場し平均5.3得点。FG成功率77.8%、3P成功率50.0%と高確率でシュートを決めた

 その後、ルイビル大のキャンパスが封鎖され、寮に住めなくなったために今野は一時帰国。故郷の仙台市内にあるリハビリセンターで、チームのトレーニング・スタッフが作成したメニューをこなす日々を過ごした。

 6月にルイビルへ戻ったが、手術したひざの痛みはなかなか消えない。チームメイトたちがピックアップゲームで競い合う中、今野は「自分もプレーしたい」という強い気持ちを抑えながら、ボールハンドリングや筋力の強化、食事の改善といったことに取り組んだ。その努力が実り、11月のシーズン開幕には何とか間に合ったのである。

 12月以降はひざの痛みがない状態でプレーできるようになったが、今度はメンタル面で辛い事態に直面した。学業などオフコートのことでストレスが溜まり、ホームシックも重なってネガティブな精神状態になってしまったのだ。2年生のシーズン中盤ということでは、ジョージ・ワシントン大でプレーしていた渡邊雄太(現トロント・ラプターズ)も、今野と同じような状況に陥っていたのを思い出す。渡邊は父親の「何のためにアメリカに来たんだ」という言葉をきっかけに苦難を乗り越え、4年生時にエースとなり、NBAへの道を切り開いていった。

 今野の場合は、ウォルツコーチやスタッフのサポートを受けながら「バスケットボールをやるためにルイビルへ来たんだ」という思いを再確認することで、苦難を乗り越えようと決意した。特に今季から女子バスケットボールチームのアスレティック・トレーナーとなった齋藤慶和(よしとも)の存在は、リハビリの面だけではなく、同じ言葉を話せるということで心の支えになった。今野にとって、齋藤は頼れる兄貴のような人である。

「自分が日本人だから特別扱いしてくれるわけではありませんけど、もちろんすごく気にかけてくれるんです。齋藤さんは全員に対して平等に接する方。自分がメンタル的に苦しかった時に、日本語でバーって(思っていることを)言いたくなることがある。齋藤さんのところへ行って泣いたこともあったし、そういった面ではすごく心の支えになりました。

 ドクターとアポイントメントがあるとき、何を言っているかを理解してもらえるかがすごく大事じゃないですか。そこでしっかり説明を聞くことができたのは齋藤さんのおかげでもあるので、ケガしたときに心強いのもあるし、メンタル的にきつい時も支えてくれました。結構ラフに付き合える、なんでも言える人です」

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