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〈香川真司32歳に〉「どちらかと言うと、幹にならない選手」J2にいた“19歳の天才”を名将たちが見出した日
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2021/03/17 11:02
本日3月17日は香川真司の32回目の誕生日だ
「07年のU-20ワールドカップに、内田篤人や森重真人と一緒に出ているから、真司のことは当然知っていた。実際に呼んでみると、ボールの置きかたとか仕掛けていくスピードが、ひとりだけ違うなと感じた。真司は周りをうまく使いながら、自分をうまく生かせる。そういう選手はなかなかいない」
現在は日本サッカー協会の技術委員長を務める反町氏に、08年当時の話を聞いたのは11年春である。北京五輪後もJリーグのクラブを指揮していた彼の記憶は、何度も上書きされていたはずだが、香川のプレーは瑞々しさを保っていた。
「判断が早いからワンタッチプレーを使えて、うまくボールをさばいて周りを使える。一度さばいて前へ出て行って、もう一度受けることもできる。そういう選手はトップ下でも使えるから、ポジションとしてはふたつの選択肢ができる。4-2-3-1のトップ下でもいいし、4-4-2のワイドでもいい。真司はこのときにもう、得意な形があったしね。サイドで開いてボールをもらって、ドリブルで仕掛けていく。カットインが得意とメディアに書かれる選手はいるけれど、真司は他の選手とちょっと違ったな」
徳永悠平に抜かれてユニフォームを引っ張る“負けん気”
このアンゴラ戦で香川に眼を奪われた日本代表の岡田監督は、4月のトレーニングキャンプに19歳のMFを初招集する。オシムから引き継いだチームに自分の色を加えようと考えていた指揮官は、「チームの閉塞感を打破する新しい力」として、香川を必要としたのだった。
3日間のキャンプを終えると、岡田の声が弾んだ。
「真司は全然臆していなかった。プレースタイルだけじゃなく、徳永(悠平)に抜かれたらユニフォームを引っ張ったりして、そういうこともやるんだなあと。ピッチでは遠慮しない。そういう強気なところもいい」
一方で、香川自身は複雑な表情を浮かべた。最終日に行なわれた筑波大学との練習試合では、先制点をゲットしていたのだが。
「それ以外のところがダメだったし、(自分が出た)45分を通してアピールしたかったので、そこがちょっと物足りないです」
手ごたえを問われても、表情は厳しいままだ。