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【武豊52歳に】天才ジョッキーが漏らしたディープの重圧、デムーロ「ユタカさんは嫌いだよ!」の真意とは 

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posted2021/03/15 06:00

【武豊52歳に】天才ジョッキーが漏らしたディープの重圧、デムーロ「ユタカさんは嫌いだよ!」の真意とは<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

52歳となった武豊(Number888号/2015年の表紙カット)

<名言3>
ユタカさんは嫌いだよ!!
(ミルコ・デムーロ/Number913号 2016年10月20日発売)

◇解説◇

 衝撃的な言葉を言い放ったのは2015年からJRA所属となったイタリア人ジョッキー、ミルコ・デムーロだ。「いつまで経っても上手なんだもん。お陰で勝てるレースを何度、負かされたことか……」と苦笑いをしながら、独特な言い回しで武豊の強さを表現していた。

「4000勝したけど、まだまだ若いからもっともっと勝つよね。現役でいながらレジェンドだよ。いや、もうレジェンドを通り越して“モンスター”だよ。<中略> 技術面はどれも優れているけど、とくにスタートの上手さだね。ゲートの中のバランスのとり方がメチャクチャ上手い。少しでもユタカさんに近づけるように、ゲートの中の態度をよく観察しているし、時々真似てもいるんだ」

  さらにデムーロが驚くのは精神力の強さだ。

「競馬で、悪いことがあっても滅多に怒らない。多少怒ることがあっても引きずらない。少し経ったらもう次のレースに気持ちを向けて、いつも通りの笑顔で周囲の人と話している。なかなかできることじゃないよ」

 JRAで通算1097勝(3月8日時点)を挙げるデムーロをもってしても、武は異次元の存在なのだろう。「ユタカさんは本当に尊敬できるお友達」としながらも、取材の最後には「でも、やっぱり嫌い。ユタカさんがいなければ僕が勝てたレースを何度も経験してきた。だから嫌いだよ(笑)」と言葉とは裏腹な笑顔を覗かせた。

 勝負師にとって「嫌い」とは最大級の賛辞なのだ。

<名言4>
「武は強い馬に乗ってるから勝てる」というのは乗っていないやつが言うこと。
(蛯名正義/Number913号 2016年10月20日発売)

◇解説◇

 蛯名正義と武豊はJRA競馬学校騎手課程第3期の同級生で1984年の入学だ。武が名騎手の三男という業界エリートならば、蛯名は一般家庭から騎手をめざした。とはいえ、「こども同士だから、普通の高校の同級生とおなじ感覚」と、今でもその関係性は変わらないという。

 当時から馬に乗ることも話すこともスマートで、いわば“優等生”だった武。蛯名は「頭の良さというか、生まれながら持っているというのか、ああいうのは教わってできるもんじゃない」と人気の要因を語っている。

 だが、それゆえ「楽に勝っているように見えてしまうのかもしれない」と蛯名は続ける。

「実際は、いろんなことがそこに凝縮されているんです。でも、そういうのを見せないところがプロだということ。<中略> 騎手は強い馬を頼まれることが大事なんです。彼は強い馬に乗って、ちゃんと結果を出してくる。自分もたくさん強い馬に乗せてもらっているけど、なかなかうまく乗れていないから」

 同級生であり、偉大なライバルであり、誰よりも尊敬する騎手――長年寄り添ってきた蛯名らしい、実感のこもった解説だった。

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