- #1
- #2
Sports Graphic Number MoreBACK NUMBER
「あのキタサンブラックはディープインパクトでも差せないよ」 天皇賞・春で激突したライバル・サトノダイヤモンド陣営が“敗北を認めた日”
posted2022/04/28 11:01
text by
石田敏徳Toshinori Ishida
photograph by
BUNGEISHUNJU
サトノとキタサンはまさに好対照だった
今をときめくノーザンファームが生産したディープインパクト産駒で、セレクトセールの落札価格は2億3000万円(税抜)を記録した高馬。サトノダイヤモンドのプロフィールはキタサンブラックと実に好対照でまさに花形満だ。しかもこの馬の場合、池江父子揃って里見にプッシュしたという経緯もある。
「もちろんプレッシャーはありましたが、それよりも喜びですよね。あのセリ、あの世代の中では自分でも“一番やってみたい”と思った馬で、その馬をやらせていただけたという」
こうして委ねられたサトノダイヤモンドを池江は彼なりのやり方でハードに鍛えてきた自負を持つ。
「調教メニューは“安全でなおかつ効果がある”というのが大原則になります。安全ばかりを求めれば馬は強くならない。しかし効果ばかりを求めれば馬が壊れてしまう。矛盾するようですが、2つのバランスを取るのが大切なんです。そのなかでウチの厩舎は日本で一番きつい調教をやっていると思っていますよ」
サトノ陣営から見たキタサンブラック「横綱の風格」
秋の最大目標、凱旋門賞(2400m)を見据えて組んだ春のローテーションもある意味、ひとつの鍛錬だった。その背景にはこんな狙いがある。
「ヨーロッパの重たい馬場の2400m戦を勝ちに行くためには、日本の軽い馬場なら3000m級のレースをこなすぐらいのスタミナ、折り合いなどのスキルを持った馬でなければなかなか厳しい。この馬は本質的に2000mから2400mぐらいが合っているタイプですが、そのスキルを磨くため、春は阪神大賞典をステップに天皇賞へ進むことにしました」
もちろん、キタサンブラックを軽んじていたわけではない。むしろその逆で、“手ごわすぎる相手”との感覚を早くから持っていた。2kg軽い斤量も利して勝つことができた有馬記念も着差はクビ。大阪杯では相手のいっそうの充実を感じ取った。
「もう、横綱の風格ですよね。周りが何もできない、させないレベルで、威圧感みたいなものもある。そういう馬はなかなかいない」