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「彼には驚かされた」ベッケンバウアーが明かす、全盛期の自分を思い出した“大好きな現役選手”とは?
text by
アレクシス・メヌーゲAlexis Menuge
photograph byL’Équipe
posted2021/01/31 17:03
1974年7月7日、セップ・マイヤー(右の青)の横でワールドカップを掲げるベッケンバウアー
ベッケンバウアー 彼ら以上のDFラインは難しい(笑)。彼ら2人とならば、世界中を震撼させられるのは間違いない。このラインを突破できる選手はそうそういないだろう。
カフーは人に強い。デュエルにほとんど負けないうえスピードと機動力が申し分ない。マルディーニは本物の最高級だ! そのエレガンスとキャリアはまばゆいばかりで、しかもたった1つのクラブで引退までプレーし続けた。名誉と尊厳に関して、彼以上の優れた例はありえない。
いま「全盛期のベッケンバウアー」を感じさせる選手
――それではこの2020年に、あなたが他の誰よりも卓越していると思えるDFは誰ですか?
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ベッケンバウアー たしかに私が作り出したリベロというポジションは、今日のサッカーにおいて影は薄い。だがプレースタイルではビルヒル・ファンダイクには驚かされた。リバプールとオランダ代表で見たプレーの衝撃といったら……。
力強さと溢れるばかりの自信には目を見張るばかりだった。あらゆる面で彼は卓越している。欠点はどこにもない。一見すると、長身であるがゆえにモビリティと柔軟性を欠くように見える。だがそうではなく、突出した予知能力が彼にはあり機動力も優れている。私の好きな選手だ。
――今の時代に全盛期のフランツ・ベッケンバウアーを彷彿させる選手はいますか?
ベッケンバウアー ビルヒル・ファンダイクの名前をあげたのは、彼がいくつかの点で私に似ていると思うからだ。
ディフェンスリーダーの役割を完璧にこなし、どんなことにも動じない。視線を見ればわかるが、決して頭を下げることなく常に胸を張っている。現役時代の私もそうで、彼と同じように頭をあげて常に前を向いていた。失点を喫したときも、足元に視線を落とすことは一度としてなかった。チームメイトががっくりしているのを見かけると、即座に叱咤激励して士気を鼓舞した。ファンダイクもまったく同じだ。とても安定していて位置取りや予測のミスがほとんどない。70~80年にかけての私がそうだったように、彼こそがチームのリズムを作り出している。リバプールがヨーロッパのトップに返り咲いた最大の功労者だ。
実際、彼が怪我で長期離脱している今のリバプールは、少し調子を落としているように見える。
――最高のセントラルディフェンダーとして、あなた以外に誰が歴史に名を刻むでしょうか?