フランス・フットボール通信BACK NUMBER
史上最高リベロ・ベッケンバウアーが明かす、「兄のような存在だった」カルロス・アウベルトとの思い出
posted2021/01/31 17:02
text by
アレクシス・メヌーゲAlexis Menuge
photograph by
André Lecoq/L’Équipe
『フランス・フットボール』誌12月15日発売号で発表されたバロンドール・ドリームチームでは、フランツ・ベッケンバウアーが史上最高のセンターバックに選ばれた。ディフェンダーとしては他に例を見ない2度(1972年、76年)のバロンドール受賞をはじめ、バイエルン・ミュンヘンと西ドイツ代表のキャプテンとしてあらゆるタイトルを獲得したベッケンバウアーは、リベロ(=アタッキングリベロ)というポジションを生み出したサッカーの改革者でもあった。
世界初の攻撃的フルバック(オーバーラップから得点をあげる)はイタリアのジャチント・ファッケッティであったが、元々はミッドフィールダーであったベッケンバウアーは、センターバックに下がることで最後尾から攻め上がって攻撃の指揮を執った。今日ではあまり顧みられないが、ゲームメイカーのギュンター・ネッツァーとバランスを取りながら攻撃を構築したEURO72の西ドイツ代表は《夢のチーム》と言われた。ヨハン・クライフに率いられたアヤックス・アムステルダムとオランダ代表とともに、モダンサッカーの原型を作ったのがベッケンバウアーの西ドイツだった。
エレガントで繊細なプレーと類まれなリーダーシップを発揮した彼が、フランコ・バレージやセルヒオ・ラモス、ファビオ・カンナバーロ、ボビー・ムーアら2位以下に大差をつけて1位に選ばれたのは、極めて順当であるといえる。ドリームチーム連続インタビューの第1回は、アレクシス・メヌージュ記者によるベッケンバウアーインタビューをお届けする。(全2回の1回目/#2に続く・肩書などは掲載当時のままです)
(田村修一)
現役引退から37年経って
50年以上にわたりドイツメディアに取り上げられてきたベッケンバウアーだが、最近では登場することは稀である。2016年と17年に2度にわたり心臓の手術をしてからは、歩行もずっとゆっくりになった。さらに2018年には股関節に補助器具を取りつけたうえ、昨年は右目の状態が悪化し、今は左目だけでしかものを見ることができない。
だが、それでもベッケンバウアーは、FF誌のために例外的にインタビューを受け入れた。テーマはバロンドール・ドリームチームである。
昨年9月11日に75歳の誕生日を迎えたベッケンバウアーは、10年以上住み続けているザルツブルク近郊のヴィラで電話インタビューに応じ、30分以上語り続けた。たしかに語り口はずいぶんとスローにはなったが、サッカーへの情熱は以前とまったく変わらないのだった。
――まずは夢の11人に選ばれたことをどう思いますか?
ベッケンバウアー 知らせを聞いたときに感じたのは大きな喜びだった。これだけの選手たちと一緒に私が選ばれたのは誇りであり鳥肌が立った。正直、身体が震えた。これほどの名誉は他にない。社会が不安定になり憂鬱な出来事ばかりだった2020年の最後に、最高の知らせを受け取れたのは本当に良かったと思う。
――現役引退から37年後にこうして栄誉を称えられるのはやはり嬉しいですか?