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堀口恭司を「誇りに思います」 女子トップ空手家・月井隼南が大晦日の“カーフキック”に刺激を受けたワケ 

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布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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posted2021/01/27 17:00

堀口恭司を「誇りに思います」 女子トップ空手家・月井隼南が大晦日の“カーフキック”に刺激を受けたワケ<Number Web> photograph by 本人提供

セルビア滞在時の月井準南(最前列)。コロナ禍の中、五輪を目指して世界のトップ選手と研鑽を積んだ

「一本歯のゲタを履いて自宅で練習していました」

 現在、月井は活動の拠点を日本に置く。母はフィリピン人で現在は同国代表という肩書きを持っているのでアパートを借りているマニラに「戻りたい」という思いもある。しかしながらフィリピンはロックダウンが繰り返され、おいそれと入国できない状況が続く。12月上旬、セルビアを出国すると、月井は日本に戻り2週間の隔離生活を送った。

「帰国してから3日間は家族にうつしたら大変なので、自宅近くのホテルに滞在していました。自宅に戻ってからも2週間経つまではランニングもしなかったですね。一本歯のゲタを履くなどして自宅で練習していました」

堀口恭司がMMAで闘ってくれることを誇りに思う

 大晦日には、伝統派空手出身で現在はMMAファイターの堀口恭司の試合から刺激を受けた。堀口にとっては膝の前十字じん帯を損傷してから1年4カ月ぶりの再起戦だったが、月井も同じ部位を負傷し何度も手術したうえで復帰という共通項を持っていたからだ。

「私も一度じん帯を断裂していて復帰後も『もう一回、そうなったらどうしよう』という不安がつきまといました。その一方でケガをすることで、精神的に強く成長できた部分もたくさんありました。堀口選手もケガをした直後はいろいろあって大変だったと思いますが、ケガを糧に更に強くなって帰ってくると信じていました」

 朝倉海に決定的なダメージを与えた堀口のカーフキック(相手のふくらはぎを狙うローキック)が話題になったことは記憶に新しい。しかし、伝統派空手においてロー、つまり下段回し蹴りの類は反則。それでも現在は空手道場の主ながら若かりし頃はプロボクサーとしても活躍していた父・新から相手にダメージを与える攻撃を幼少期から教わっていた関係で、月井はふくらはぎへの攻撃がいかに効果的なのかを把握している。

「空手ではスネ当てをつけるけど、サポーターがついているのはスネ側だけでうしろの方はゴムになっている。数年前、海外で一度相手が突っ込んできたときにふくらはぎに思い切りヒザが当たったことがあるけど、そのときは肉離れになって3週間程動けなくなりました。なので、『あそこを蹴られたら絶対痛い』と思いながら試合を観ていました。でも、空手の試合でふくらはぎを蹴ることはないので、あれは堀口選手がMMAで身につけたものだと思います。伝統派空手の動きを活かしてMMAで闘ってくれることは同じ伝統派出身としてとても嬉しいし誇りに思います」

【次ページ】 「いま判断したとしても、3日後の状況は変わっている」

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