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「試合のたびに10kgの減量を強いられて…」 レスリング高谷惣亮が“自分らしく”史上初の4階級制覇
posted2021/01/25 06:00
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
AFLO
考える力と実行力が、コロナ禍に屈しない偉業を生み出した。昨年12月20日に東京・駒沢体育館で行なわれた全日本レスリング選手権男子フリースタイル92kg級で、同86kg級の東京五輪代表を目指す高谷惣亮(たかたにそうすけ=ALSOK)が優勝。74kg級('11~'16年)、79kg級('17年)、86kg級('18、'19年)と合わせて4階級を制した。10連覇は男子3人目。4階級制覇は史上初の快挙だ。
「86kg級よりも大きくて力の強い選手、重い選手と戦って、どうさばけるのかを試したかった」
決勝の相手は'13年の国体で敗れた山中良一。試合開始早々に得意のタックルから相手の右足を取り、間髪入れずに持ち上げて2ポイントを取ると、1分24秒で試合を決めた。「相手の弱いところを突いて力を分散させているので、重さを感じなかった」と技術面の向上にご満悦だ。
ロンドン五輪とリオ五輪には74kg級で出場したが、試合のたびに10kgの減量を強いられ、体へのダメージを感じていた。
「自分が自分らしく戦えるところで戦うのがスポーツであり、そのための階級制だと思う」と、リオ五輪後は普段の体重である88kgに近い階級に上げることを決めた。
「ニジュー代に負けずに頑張っていきたい」
「高校時代までは気合と根性で育ってきたが、次のステップに行くためにどうやれば強くなるかを考えてきたことが10連覇につながった。'20年はコロナ禍で何ができるかを考えながら、人としても成長できた」
恒例である優勝時の時事パフォーマンスでは、'20年にブレークしたアイドル「Niziu(ニジュー)」の縄跳びダンスを披露した。「僕はサンジュー(31歳)だけど、ニジュー代に負けずに頑張っていきたい」。階級は変われど軽やかに笑いを誘う姿は変わらない。
4月に開催予定の東京五輪アジア予選86kg級の代表に決まっている。2位以内なら3度目となる五輪出場が決まるが、「2位ではダメ。優勝して、高谷なら必ず勝ってくれるという期待を背負って戦いたい」と意気込む。依然としてコロナ禍で先行きは不透明だが「スポーツ選手として国民の皆さんが応援できる態勢になってから開催してほしいと願っている。皆さんから応援される東京五輪になってほしい。その中で金メダルを獲りたい」と言葉に力を込めた。