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ブルペン捕手も「18歳であの球はスゴい」 キャンプ最注目はオリックス“ドラ1投手”「松坂大輔よりも驚いた遠投」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2021/01/27 11:02
オリックスの新人合同自主トレーニング。ブルペンで投球練習する山下舜平大
横浜高・松坂大輔よりも驚いた“遠投”
昨年8月、私が福岡大大濠高を訪れる前に行われた「プロ志望高校生合同練習会」。
甲子園球場を舞台に行われた西日本の高校球児を対象にしたオーディションの現場で、私がいちばん驚いたのは、山下の「遠投」だった。
外野の芝生で始まったキャッチボールが、20メートル、40メートル、60メートル……どんどん距離を広げていくのに、山下舜平大投手の投げるフォームがぜんぜん変わらない。
まず、きちんと軸足(右足)で立ち、体の左右をきちんと割りながら、しっかりと左足を踏み込んでいく。同時に、股関節を前に押し出すようにして体重を左足に乗せながら、体の左右を一気に切り返す。そして、そこまでの「連動」につられて、右腕が振られる。
おそらく、腕を振る瞬間に、彼の意識は“右腕”にはないはずだ。
驚いたのは、右腕にほとんど力感を感じないのに、投じられるボールが生き物のように、まっすぐな軌道を残して、パートナーのグラブに吸い込まれていくことだ。60メートルが、70、80メートルになり、相手がバックスクリーン前に達しても変わらない。
遠投のパートナーが、助走の勢いと投げる軌道の放物線の角度の助けを借りて、やっとのことで返球してくるのに、山下のほうは、変わらぬ様子で、1球1球きちんと“手続き”を踏みながら、100メートル近い遠投をライナー性の軌道で繰り返す。
横浜高の頃の松坂大輔の遠投もすごかったが、山下ほどには驚かなかった。
あの遠投力で、“18.44”を全力投球したら、いったいどんなボールを投げるんだ……。そう思ったらゾクッとなって、その後、実際にブルペンで受けた「山下舜平大」は、思った通り、とんでもない剛腕だったというわけだ。
高めに抜けたボールを捕りにいったミットはあっさり弾かれて、中にあった私の中指のいちばんの上の関節は、いまだに曲がったままになっている。