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ブルペン捕手も「18歳であの球はスゴい」 キャンプ最注目はオリックス“ドラ1投手”「松坂大輔よりも驚いた遠投」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2021/01/27 11:02
オリックスの新人合同自主トレーニング。ブルペンで投球練習する山下舜平大
「多分、今までで一番の破壊力です」
昨年9月、福岡大大濠高グラウンドのブルペンで、山下の剛球を受けていた。
およそ20年間、ドラフト上位でプロに進んだ怪腕、剛腕の全力投球ばかり受けてきたこのミットの中の手のひらが、
「こいつのボール、多分、今までで一番の破壊力です!」
そう教えてくれたのだ。
18.44メートル先のはずのマウンドが13メートルぐらいに見えた。直径およそ73ミリのはずの硬球が、ソフトボールぐらいの大きさにズームアップして来て、アッ!という間もなくミットの芯にめり込んでいく。
握力MAXで止めにいったのに、捕球点でミットがブルブル震えているのは、どうしたわけか。手のひらの奥の骨にガツンときて、そのまま頭のてっぺんに突き抜ける。
189センチ93キロの雄大な体躯が、しゃがんで構えるこっちの目から見ると、おおいかぶさってくるようだ。それで、“13メートル”なのだから、たまらない。
こっちの体感は「160キロ」
「あんまり調子よくなかったんですけど、2、3球は150いったと思います」
あとで、ボソッと教えてくれたが、受けるこっちの体感は「160キロ」だ。これまで経験したことのない圧倒的な恐ろしさだった。
おまえ……自分で受けてみろよ……自分のボール。
なさけない恨みごとをつぶやきながら、ほぼヤケクソでミットを構えると、恐怖はスーッと消え去って、歴史に残るようなこんなボールに体を張れる光栄な思いが立ちのぼってくるのだった。
山下がすごいのは、そんなとんでもないボールを投げておいて、まだ余力を残していると感じさせることだ。
超剛球は、決して力任せの産物ではない。彼は間違いなく「剛球投手」でありながら、きちんと投げようとする意識が旺盛である。つまり、フォームのボディバランスがとれている。
彼と話をしていて、もう1つ驚いたのは、(失礼ながら)印象よりずっと理詰めにものごとを考えている……ということだ。
フォームを気遣いながら投げられるというのも、こうした性分の一端であろう。投手にとって、とても大切なことだ。フォームに合理性を求めれば、コントロールの向上につながり、日々の練習で鍛えられたパワーをリリースの一瞬に集約する技術の習得にもつながる。
間違いなく「稀代の剛腕」でありながら、山下はそういうタイプの投手だ。