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「私はオリンピックのためにレスリングをやっている」 57kg級世界女王・川井梨紗子の苦しい胸中
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph bySachiko Hotaka
posted2021/01/20 17:01
川井梨紗子は「オリンピックのためにレスリングをやっている」と語り、今夏を見つめている
昨年2月のアジア選手権から実戦できていないが
しかし、コロナによってそのサイクルだけではなく、川井が描いた東京オリンピックまでの青写真は狂わされた。実戦のマットには、昨年2月インドで開催されたアジア選手権に出場してから上がっていない。
試合勘を心配する声もあるが、川井は「みんな一緒」と気にする素振りを見せない。
「昨年12月、日本は出場しなかったけど、個人戦のワールドカップはありましたけどね。だいたいの国の選手はハンディがある状況になっている」
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一昨年の時点で代表内定を得ていたので、国内の大会に出場するつもりはなかった。昨年12月の全日本選手権では至学館の後輩のセコンドを務めている。
「といっても(至学館の)同門対決になったときくらいしか就いていないですけど、やっぱり見ているだけでも緊張しましたね。いつも一緒に練習している者同士の試合でもそう思いました」
「私はオリンピックのためにレスリングをやっている」
昨年の全日本選手権では男子グレコローマンスタイル60kg級の文田健一郎以外、代表内定者は出場を辞退した。オリンピックを見据えたら、国際戦でなければ直近の試合は意味がないのか。川井は「国内と海外では緊張感が違う」と切り出した。
「やっている人にしかわからないと思うけど、そう感じています。私はオリンピックのためにレスリングをやっている。だったらVS外国人の緊張感を味わいたい」
コロナ禍を経験することで、レスリングに対する思いは一層強くなったという。
「今までは大会に出るにせよ、遠征に行くにせよ、検査もマスクも必要なく、不便なくできていたんだと思います。いまは合宿するにも、その前後でPCR検査を受けなければいけなかったり、いろいろな制限がある」
そうした中、川井は指導陣から組手をほめられることが多くなった。使いこなすことができれば、組手によるフェイントで相手を崩したりコントロールしたりすることができる。川井も女子の中では組手が得意な方だと自負するが、組手だけで勝てるものでもないとも思っている。
「今日は調子がいいと思うときもあれば、そうでないときもある。調子の善し悪しは何が原因なのかと考えたら、まだ自分をわかりきっていないところがある。オリンピックまでにもっと自分のことを知りたい」