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“J監督経験ゼロの日本人指導者”がタイ強豪&弱小クラブの救世主? 滝雅美の物語が濃すぎる
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/01/18 06:00
タイで指導者としてのキャリアを積む滝雅美。彼のような存在がアジア、ひいては日本サッカーの質を上げるはずだ
展開が急すぎる。慌てて「いや、監督はどうしたのか?」と尋ねると、クビを切られて誰もいないと返される。頭の回転が追いつかない流れに振り回されながらもグラウンドに立つと指導者としての血が騒ぐのか、「じゃあやるか」とスイッチが入ってしまった。
残留を決めて「じゃあ来シーズンもよろしく」
結局、その試合で監督を務めて見事2-0で勝利。そうなると、お役御免というわけにもいかなくなる。4日の予定を終えて帰ろうとすると、現地スタッフに帰りの飛行機日程を変更されて、「ぜひ次の試合でも指揮を執ってほしい」と懇願されてしまう。
乗り掛かった舟だと引き受けてみたところ、残留プレーオフ2試合目にも勝利し、見事2部残留を手にすることに成功した。
関係者と大喜びして、今度こそ日本へ帰るかと思うと、「じゃあ翌シーズンもよろしく」というオファー。ここまでくると、もはや運命の巡り合わせか……。
いずれにしても、滝はそうしてタイで指導者を続けている。
2019年には“海外組指導者”としてACL本戦を経験
その後、3部に降格したタイ・ホンダFCを2部に再昇格させただけではなく、2016年に2部で優勝。1部昇格を果たした際にはGMを務めた。その手腕は高く評価され、タイでの人脈も広がった。
2018年に帰国してからは藤枝MYFCの強化部兼アカデミーダイレクター、セレッソ大阪サッカースクールコーチとして活動していたが、19年、前述の通りリーグ優勝クラブからオファーを受け、再びタイリーグで指揮を執ることを決断した。
そしてAFCチャンピオンズリーグでは、海外クラブを率いた初めての日本人監督として本戦を経験することになった。
ただ、チェンライ・ユナイテッドでの挑戦は思っていた以上に難しかったようだ。
新型コロナウイルスの影響で国内リーグが長期中断を余儀なくされたこともそうだが、その間にクラブ内でもいろいろな動きがあったという。