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“J監督経験ゼロの日本人指導者”がタイ強豪&弱小クラブの救世主? 滝雅美の物語が濃すぎる
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/01/18 06:00
タイで指導者としてのキャリアを積む滝雅美。彼のような存在がアジア、ひいては日本サッカーの質を上げるはずだ
ラヨーンFCはプロフェッショナルな組織とはほど遠かった。滝は監督でありながらスポーツディレクターのような仕事も担わなければならない。それでも滝が心に秘めている思いは、とても純粋なものだ。
「僕はサッカーのコーチだから、サッカーの指導がしたい」
知人の地元ジャーナリストは「滝さんはすごくスピリットのある人だから」とその決断を受け止め、理解を示してくれたという。
チェンライとは「円満に辞めた。喧嘩はしてない」
同時に滝は、自身の移籍に関してチェンライ・ユナイテッドとの間に確執はないことを何度も強調している。
「円満に辞めた。喧嘩はしてない。チャンスをくれたことに感謝しているし、今も好きなチーム。連絡ももらっている」
新天地ラヨーンFCは滝就任後の2試合で勝ち点4を獲得し、「ひょっとしたら」という空気を醸した。とはいえ、残留圏までは勝ち点10近くも離されている。どこまでいけるか。かなり苦しい状況なのは間違いない。
選手たちを奮い立たせ、信頼を得た言葉
それでも滝は、このチームには何かがあると感じているようだ。
「選手たちには『負けるかもしれないけど、そこでくよくよせずに、できることを全力でやりましょう』と言っています。負けることを恐れちゃいけない、全力でやったら結果は後でついてくるものだからって。試合はいつも0-0から始まるわけで、チャンスは平等にあるはずだって話したら、タイの選手たちは素直だから、けっこう奮い立ってくれてます。キャプテンもすごくいい人間なので、チームもまとまっています。過去に対戦したときに『このチーム最後まで諦めないんだな』って良い印象を持っていたので、信頼して一緒に頑張れる感じはあります」
WEBインタビューをした数日後、滝から連絡があった。
「今日の試合勝って最下位脱出しました!」