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“J監督経験ゼロの日本人指導者”がタイ強豪&弱小クラブの救世主? 滝雅美の物語が濃すぎる 

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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photograph byGetty Images

posted2021/01/18 06:00

“J監督経験ゼロの日本人指導者”がタイ強豪&弱小クラブの救世主? 滝雅美の物語が濃すぎる<Number Web> photograph by Getty Images

タイで指導者としてのキャリアを積む滝雅美。彼のような存在がアジア、ひいては日本サッカーの質を上げるはずだ

「クラブのオーナーさんとは5年くらいの仲で、彼が『手伝ってくれ』というのでタイに来たんです。ところが、コロナの前はまだよかったんです。『僕がこうする』と言えば、なんだかんだで僕に任せてくれていました。ただコロナがあって、いろいろ大変なことがあって、そうもいかなくなってしまいました。

 オーナーがサッカークラブを作ったのは、自分がやりたいからなんです。テレビゲームの主人公となって自分で操りたい。好きな選手を連れてきて、自分でフォーメーションとメンバー決めてやりたい。そういうオーナーさんもいるんです。

 僕もそういう部分があるというのはわかっていましたが、最終的には思っていた以上に仕事をさせてもらえませんでした」

1部最下位のクラブが「帰らせてくれない」

 2020年10月、契約延長の話もあったが、更新せずにクラブを去った。

「チェンライに10カ月いましたが、5カ月はコロナの影響でサッカーができませんでした。リーグ戦は10試合くらいで、AFCは2試合。2試合とも0-1の敗戦だったので、ちょっと悔いが残る感じではありました」

 そんな滝だったが、タイの人たちがそのまま日本に帰すことはなく、今度は1部リーグ最下位で苦しんでいたラヨーンFCがオファーを出してきた。

「話だけでも聞いてほしいと言うので、150kmくらい離れた街にバスで向かったんです。そうしたら帰らせてもらえなくなって(苦笑)。以前から知っているオーナーが頼むからやってくれって」

 オーナーがバンコクのホテルに部下を送り込み、滝の荷物をとってこさせた。その熱意を前に、「練習からすべての指揮を任せてくれて、今のメンバーだと厳しいから補強にも動いてくれるならば引き受ける」という点を確認してサイン。滝の監督就任劇は、タイの全国ニュースでも取り上げられた。

 国内トップクラスのクラブから降格確定と見られているクラブへの移籍である。

なぜ、開幕から9連敗しているクラブに?

 ラヨーンFCは今季2部から昇格したクラブで、開幕から9連敗を喫するなどその段階で1勝10敗の勝ち点3、最下位の16位に沈んでいた。そこに至るまでの内情を知らなければ「なんでそんなことをするんだ」と思われるかもしれない。

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