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フロンターレ齋藤学が語る「絶望の時期」 ケガでちらついた引退、回復後もベンチ外続きでJ2移籍希望
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byMasashi Hara/Getty Images
posted2020/12/31 11:05
1年半前のケガから苦しい状況が続いた齋藤だったが……
この時期、齋藤は移籍を希望している
「ミツさん、周平さんには感謝しかないです。本当に嫌になるくらい話をしましたよ。俺は思うことを口にするタイプだし、2人とも聞いてくれたり、自分の経験を含めて話をしてくれたり。気持ちをつなげて次の日の練習、頑張れるようにしてくれましたから」
自分の実力を正しく評価してくれないという不貞腐れの類とは違う。
どこまでやれるのか分からない不安が、齋藤を支配していた。
「あの頃は、自信みたいなものがなくなってましたね。練習試合だけじゃ、自分のスピード感がどうなのか分からない。ああ、足りていないからメンバーに入れていないんだなって思うだけじゃないですか。そうなると今度は試合に出るのが怖くなってくるんです」
この時期、齋藤は移籍を希望している。カテゴリーを下げてJ2でリスタートしたいと考えるようになっていた。自信の喪失が、ここまで苦しいとは思わなかった。
メンバーにも入っていけないという絶望──
そんな彼にリーグ戦3試合ぶりにベンチ入りのチャンスが巡ってくる。チームは8月23日にアウェーで名古屋グランパス戦をこなし、そのまま26日のアウェー、ヴィッセル神戸戦のために関西に入る予定だった。名古屋戦でケガ人が出たことで、川崎にいる齋藤が呼ばれたのだった。
だが結局はチームメイトのケガが軽傷だったためにベンチ外に終わる。コンディション調整のため黙々とスタジアムの外周を走るしかなかった。
ケガの絶望が終わって待っていた、メンバーにも入っていけないという絶望──。
移籍の第2登録期間も8月28日に終了した。しかしまさかここから反撃のドラマが始まろうとは誰も想像していなかった。
(後編に続く)
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