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フロンターレ齋藤学が語る「絶望の時期」 ケガでちらついた引退、回復後もベンチ外続きでJ2移籍希望
posted2020/12/31 11:05
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Masashi Hara/Getty Images
特大のご褒美が待っていた。
11月25日、等々力競技場、勝てば自力優勝が決まるガンバ大阪戦。
既に4-0と大差でリードしていた後半41分、三笘薫に代わって齋藤学がピッチに足を踏み入れる。その4分後だった。旗手怜央が裏に飛び出したタイミングで齋藤も併走して相手ディフェンダーよりも前に出た。旗手のシュートをGKが弾いたところに、走り込んでいた。左足で押し込んだチームの5点目は、齋藤の今季初ゴール。コーナーフラッグ付近ではベンチからも次々選手が飛び出してきて背番号19を祝った。家長昭博も両手を広げて喜びを表現している。
おまけのゴールなんかじゃない。
優勝を決めたあの試合を締めくくる、無欲の一発の意味。併走しても旗手にパスを要求したわけでもない。この前のシーンでは自分もシュートを打てるタイミングで、小林悠にパスを出している。とにかく今シーズンのマナブはがっつかない。無欲の理由を、インタビューの冒頭で聞いておきたかった。
「俺“持ってたな”と思いましたね」
「同じポジションの薫があれだけ点を取っていて、アキさん(家長)も数字を出していてとなると確かにゴールは欲しいですよ。でもチームの結果を追い求めるなら、そこにこだわり過ぎないというのはずっとやってきたこと。だから今年は(ゴール)ないかもなくらいの気持ちでしたね」
その心持ちでいたら、大事な試合でボールが自分のところにこぼれてきた。
水を向けると、うんうんと頷いて笑みを向ける。
「スピードをつけて入っていって、(GKが)弾いたボールもスピードがある。あれ、角度とかちょっとでも違っていたら俺、届いていないんですよ。ボールがあそこじゃない限りは押し込めなかった。だから俺“持ってたな”と思いましたね」