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フロンターレ齋藤学が語る「絶望の時期」 ケガでちらついた引退、回復後もベンチ外続きでJ2移籍希望
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byMasashi Hara/Getty Images
posted2020/12/31 11:05
1年半前のケガから苦しい状況が続いた齋藤だったが……
苦しみに打ちのめされていたあの姿からは……
リモートの画面から、彼の笑い声がこぼれる。
うれしそうな、ちょっと照れくさそうな。
フロンターレの圧倒的優勝において、齋藤はその主役の面々には入らない。リーグ戦のゴールは1つだけで分かりやすく結果を残してきたわけでもない。
しかしながら、事実から見えるものがある。今シーズン初先発した8月29日、ホームの清水エスパルス戦以来、コンスタントに出場していること。チームはその試合から12連勝を飾っていること。歴史的な独走のセカンドダッシュを呼び込んだ1人であること──。
シーズン終わりに、笑顔の齋藤に出会えるとは思っていなかった。苦しみに打ちのめされていたあの姿からは想像もできない。だからこそ「特大のご褒美」という冒頭のフレーズを記しておきたかった。
引退の決意を固めつつあった
話は1年4カ月ほど前にさかのぼる。
あのときもホームのエスパルス戦。2019年8月24日、プレー中に右ひざを負傷して前半途中で交代を余儀なくされた。内側側副じん帯損傷、全治6~8週との診断だった。2カ月後に復帰することになるが、本調子からはほど遠かった。
「足が痛くてボールを思うように蹴れない、ジャンプできない、ダッシュできない。最悪というか、何もできないんですよ。だけど試合には出たいじゃないですか。練習に頑張って入ってみる。だけどメンバーに簡単に入れるもんじゃないから、ドンドン悪循環に陥っているなって分かるんです。足が良くなるために、いいと思ったものは大体試してみましたよ。それでもまったく良くならないし、その気配もない。これ以上サッカーを続けるのは無理だなって思いました」
引退の決意を固めつつあった。
快方に向かわないのだから、あきらめも肝要だと己に言い聞かせた。