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【命日】「なんとしても星野監督を日本一に」楽天“マギー&ジョーンズ”が語る《2013年奇跡の優勝秘話》
text by
ブラッド・レフトンBrad Lefton
photograph byNaoya Sanuki
posted2021/01/04 11:04
就任3年目の星野仙一監督が、66歳で初めて日本一になった2013年シーズン
「負けた翌日の田中の雰囲気を知らないので、どんな表情で来るのかと興味深かったです。しかし、無表情で無言のままだった。だから私は“あれ? まさか今日も投げるのか?”と感じて、アンドリューとも目を合わせました。私は沈黙の状況に耐えられず、田中に聞いたんです。今日、投げるのか? って」
田中は英語で力強く答えた。
「ウィー・ウイン、アイ・ピッチ」
マギーは驚いた。
「えーー!? マジかって。だって、前夜に160球を投げたばかりですからね。まさか連日投げるとは思えませんでした。ところが3-0で迎えた9回に、本当に田中の登場曲が流れ始めたんです。スタンド全体が沸きました。今、思い出しても鳥肌が立ちます。素晴らしい終わり方でした。もし星野監督が当時現役投手だったとしても、田中と同じように投げたと思います。『抑えさせてください』ではなく、『抑えに行くぞ』と燃えて、マウンドに上がったんじゃないかと。星野監督と田中の間にどんな会話があったのかは分かりません。でも、私とアンドリューは、あの終わり方こそ、星野さんという野球人の性格にぴったりな勝利の仕方だったと感じました」
巨人の代打・矢野謙次のバットが空を切り、田中が歓喜の雄叫びをあげた。指揮官が選手、スタッフ一人ひとりと抱擁を交わす。もちろん、全幅の信頼を置いた外国人とも。星野監督だけじゃなく、マギーにとっても、ジョーンズにとっても、野球人生で初めてナショナルチャンピオンになったことを喜びながら。