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巨人・原監督が坂本勇人に「ひとムチ入れなきゃ」 打倒ソフトバンクへ主将に求められることとは
posted2021/01/01 17:05
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Naoya Sanuki
ミスター曰く。
「プロ野球選手の30代前半はカルビです」――。
身体が磨かれる20代前半。技術を追求する20代後半。そして身体も出来上がり、様々な研鑽を経て技術的にもある程度の域に到達した選手たちが、30代に入って手にするのが心の強さである。
だからこそ30代前半は“体技心”がバランスよく整い、野球選手は「脂が乗り切ったカルビになる」。
そうして、30代後半に入ると次第に肉体の衰えが始まる。
巨人を率いていた頃の長嶋茂雄監督(現終身名誉監督)から聞いた話だった。
そのカルビの中でも、上質な黒毛和牛A5ランククラスの選手の1人に、巨人・坂本勇人内野手がいる。
「力足らずが結果に表れてしまった」
プロ入り2年目の2008年、19歳でショートのレギュラー選手となり32歳となって迎えた2021年はプロ15年目のシーズン。これまでに首位打者を獲得。19年には最高殊勲選手に輝き、20年には史上2番目の若さで通算2000本安打も達成した。プレーヤーとして日本球界の頂点を窺う選手の1人だが、そんな坂本に1つ足りないものがある。それは日本一を決める大舞台、日本シリーズでの実績だった。
「力足らずが結果に表れてしまった」
こう振り返ったのは屈辱の2年連続4連敗を喫した昨年の日本シリーズ終了後だった。
前年の19年はソフトバンクバッテリーの徹底した内角攻めの前に沈黙。その残像を残したままに臨んだ昨年は、インコースを意識するあまりに外角に踏み込めずに結果を残せなかった。
第4戦ではそれまでの3番からかつての定位置の2番へと打順が変わり、1回無死二塁から先制二塁打を放って意地は見せた。それでも4戦トータルでは14打数3安打で打点はその第4戦の1点だけ。7つの三振を喫して、パワーピッチを繰り広げるソフトバンク投手陣に抑え込まれた。