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“いい人ぶらない”渋野日向子の自然体な復活劇 「笑顔の暗殺者ね」と元世界1位が称えたワケ<全米女子4位>
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byGetty Images
posted2020/12/15 12:30
最終日で首位から転落してメジャー2勝目とはならなかったものの、渋野らしいゴルフが2020年ラストの大舞台で出た
『もうサプライズじゃない。渋野が3打差の首位に立つ』
昨年の全英女王の活躍を米女子ツアーの公式サイトはそう伝えた。だが、渋野をよく知る日本のファンの方が、今回の快進撃にはむしろ驚いたはずだ。
わかりやすい挫折のストーリーだった
東京五輪に米ツアー挑戦、さらなる飛躍の年になるはずだった2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大によって全てが白紙になった。6月の国内ツアー開幕戦でいいところなく予選落ちすると、ディフェンディングチャンピオンとして臨んだ8月の全英女子オープンでも初挑戦の本格的なリンクスに歯が立たずに105位。わずか2日間で姿を消した。
その後の米ツアーでもメジャー2大会を含む4試合に出場し、4戦とも予選は通ったものの、華々しい活躍は見せられなかった。冷静に考えれば、ツアー本格参戦2年目の選手が米ツアーでそれだけ安定した成績を残せば十分な結果に思えるが、世間も、そしておそらく渋野自身もそこに納得していなかった。
国内に戻っても結果が出ないまま、足底部に痛みを訴えるようになると、いよいよ不安が広がってくる。不調に陥ったヒロインが、怪我をきっかけに出口の見えないトンネルにはまっていく。わかりやすい挫折のストーリーだ。
国内ツアー最後の2試合で5位、3位と復調の兆しを見せたが、若手の台頭もあって東京五輪出場圏内からも押し出された。そんな状況で迎えた今年最後の試合が、全米女子オープンだったのである。
「6月から8月の自分を見ているとよく」
「6月から8月くらいの自分を見ているとよくここまで来られたと思う」
試合後の渋野の言葉は、偽らざる本音だったはずだ。
一時の不調からどうやって持ち直してこれたのか。その要因の1つは「気持ちの変化」だったという。