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宮里美香はなぜ現役を続行するか。
踏みとどまらせた“先輩”藍の言葉。
posted2017/12/07 07:00
text by
南しずかShizuka Minami
photograph by
Shizuka Minami
5日間の最終予選会を終えて、宮里美香は7オーバーの68位に沈んだ。
来季の出場権を争う米女子ゴルフツアーの最終予選会に出場したものの、米女子ツアーに参戦して以来、9年ぶりに出場権を喪失した。
「(9年間)あっという間でしたね」
試合後に溢れる涙を両手で何度かぬぐったが、一旦気持ちが落ち着くと、宮里らしい穏やかな笑顔を見せた。予選会を通して、心の葛藤が和らいだのを確信したからである。
「ゴルフ人生でこんなに悩んだのは初めてだったので」
“天才児”――ゴルフ関係者は敬意を込めて宮里美香を、そう呼んだ。
9年前。宮里は米女子ツアーの最終予選会に出場し、当時の日本史上最年少記録で、米女子ツアーにフル参戦できる出場権を獲得した。宮里の同期は、'09年の賞金女王のシン・ジエ、'14年の賞金女王のステイシー・ルイス、ミッシェル・ウィーなど錚々たる選手ばかりだった。
だが、プロに転向したばかりの19歳の宮里は臆するどころか、世界トップの選手に混じって度々優勝争いを演じた。その勢いをかって、日本女子オープンも2度制している。
日本代表になれず、ゴルフ人生で初の挫折を。
日本を代表するゴルファーまで上り詰めた宮里が次に目指したのは、リオ五輪だった。
例年以上に自分自身を追い込んで結果を求める。ところが、五輪代表決定の期限が近づくにつれて、宮里の結果が出なくなり、ついには代表から落選してしまう。
天才児にとって、ゴルフ人生で初の挫折と言っても過言ではなかった。
代表落選のショックが尾を引き、一生懸命プレーする他の選手に申し訳ないほど「ただただ試合に出る状態」が続いた。
「体は元気だからゴルフをしないと……」
頭では分かっていても、どうにも体がついてこなかった。