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“いい人ぶらない”渋野日向子の自然体な復活劇 「笑顔の暗殺者ね」と元世界1位が称えたワケ<全米女子4位>
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byGetty Images
posted2020/12/15 12:30
最終日で首位から転落してメジャー2勝目とはならなかったものの、渋野らしいゴルフが2020年ラストの大舞台で出た
「自分の中で気持ちの変化はすごくあるけど、ゴルフに関しては成長しきれてない。そういうところで3日目、4日目にボロが出てしまう。気持ちでなんとかなった部分もかなりあると思うんですけど、それだけじゃどうにもならないのが最終日のスコアかなと思います」
それでも驚異的な粘りは確かだった
3日目に入って乱れ始めたショットは、最終日になるといよいよ制御が利かず、パーオン率は44%まで低下した。10、11番で連続ボギーを叩いた後、12番でグリーン奥からのアプローチが大きくオーバーすると、テレビ解説の岡本綾子は「どこかの歯車が外れましたね」と呟いた。傍目にもそう見えた。もう限界だと。
「連続ボギーを叩いて、バーディーを取る! っていう気持ちがなくなってしまったというか、とりあえずグリーンに乗せたいという気持ちが強くなりすぎた。自分の体の動きも把握できてない。なかなかコントロールしづらかった」
それでもなお最終盤まで優勝の可能性を残し続けたのは驚異的な粘りだったというほかない。バリエーション不足を指摘されていたアプローチも成長を示し、メジャーのセッティングの中でも厳しいパーを拾っていった。
「悔しい気持ちが8割くらい」
その結果が4位。
「悔しい気持ちが8割くらい。やり切ったなとか、悔いはないなという思いが2割。耐えられるところは耐えまくってたけど、そういうゴルフでは通用しない。来年はアメリカツアーにスポット参戦しながら、作り上げ始めた自分のゴルフを完成に近づけていきたいです」
今の力の限界はここだったかもしれない。だが、将来の限界値はむしろ分からなくなった。シンデレラの笑顔よりも、アサシンの鋭い眼差しが戦い終えた渋野の顔に宿っていた。
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