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“いい人ぶらない”渋野日向子の自然体な復活劇 「笑顔の暗殺者ね」と元世界1位が称えたワケ<全米女子4位>
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byGetty Images
posted2020/12/15 12:30
最終日で首位から転落してメジャー2勝目とはならなかったものの、渋野らしいゴルフが2020年ラストの大舞台で出た
今大会中、海外メディアから有名になって何が変わったかと聞かれた時、渋野は「自分でもすごくいい人ぶってる気がします」と答えていた。そして「自分らしくいづらくなったんですけど、最近はその殻を破って、また自分らしくいられるようになりました」とも自己分析していた。
「ゴルフを始めたての気持ちでいる方が」
また、こんな言い方もしていた。
「(復調の要因は)今までの自分を捨てたことかな。プロになりたて、ゴルフを始めたての気持ちでいる方が、ゴルフも、精神的にも成長できるなと思って初心に返ったからかな?」
絶好調で、怖いもの知らずで、やることなすこと上手くいった昨年の自分に戻ろうとするのでなく、もっと強い自分をここから作り上げていく。その切り替えが浮上のきっかけとなったのだという。
だとすれば、今大会の無観客開催は渋野に味方した部分もあったに違いない。たくさんのギャラリーや見知った関係者が多くいれば、渋野はきっと無理にでも笑顔を作ろうとする。求められる役割を演じようとしたはず。
無観客だったからこそ、ハイタッチもなく、モグモグもなく、必要以上の笑顔もなく、ただただひたすらに難コースと向き合うことができたのだ。
「グレート・ポーカーフェイス」「笑顔の暗殺者」
そんな渋野のゴルファーとしての本質を肌で感じ取っていたのは海外の選手たちである。
元世界1位のリディア・コは渋野について「“グレート・ポーカーフェイス”か“スマイリング・アサシン(笑顔の暗殺者)”ね」とニコニコしているだけのシンデレラとは違う一面を指摘し、3日目に同組で回ったアマチュアのケイトリン・パップも「彼女の振る舞いは素晴らしかった。1日中ニュートラルで、高ぶりすぎたり、落ち込みすぎたりしない。それがすごく印象的だった」と明るさよりも落ち着きが印象に残ったと話した。
ただし、自分らしくいるだけでは補いきれない自らの“限界”も全米女子オープンは教えてくれた。