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<取材記者の本音>正直ガッカリのプロ野球トライアウト…キラリ光った楽天戦力外の“フルスイング”外野手とは?
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNanae Suzuki
posted2020/12/11 17:15
12球団合同トライアウトを盛り上げた新庄剛志さん(48)
楽天・耀飛外野手は、10月末のイースタンリーグ最終盤の4試合で16打数9安打の打率.563…ホームラン2本をはじめ、二塁打、三塁打を打ちまくっていたからだ。
その5日後の通告だったから、「大噴火」の頃には、すでに戦力外は決定事項だったのかもしれない。
調べてみたら、シーズン通しても、イースタンの45試合で打率.330、4本塁打、23打点。これなら、立派なものだろう。
スイングスピードや強烈なインパクト力もさることながら、目の前にやって来ている人生の大ピンチを、このスイングで吹き飛ばしてやるぜ! そんな覇気と心意気が、遠くのネット裏二階席からも、リアルに感じられた。
「技術」よりも必要なもの
トライアウトとは「オーディション」である。
一生とは言わないが、この先10年、20年の人生を左右するほどの大切な1日に、いちばんアピールすべきは、もしかしたら「技術」などより、その道で生きていこうとする「覚悟」のほうなのではないか。
「プロの眼」が選手たちの技術の程度を見抜くには、投手なら20球、打者なら1、2打席も見れば、たくさんなはずだ。
なのに、日陰の冷え冷えとした席で、シートバッティングの最後までプロ野球関係者たちが我慢していたのは、「そこのところ」を見極めたかったからではないか。
5時間ほどに及んだトライアウトが終わって、コートの襟を立てるようにして足早に引き上げていくプロ野球関係者たちの後ろ姿に、今日の「結果」が見えたような気がしていた。
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