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<取材記者の本音>正直ガッカリのプロ野球トライアウト…キラリ光った楽天戦力外の“フルスイング”外野手とは? 

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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photograph byNanae Suzuki

posted2020/12/11 17:15

<取材記者の本音>正直ガッカリのプロ野球トライアウト…キラリ光った楽天戦力外の“フルスイング”外野手とは?<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

12球団合同トライアウトを盛り上げた新庄剛志さん(48)

 背番号150、楽天の育成選手・田中耀飛(登録名・耀飛、24歳・180cm96kg・右投右打)である。耀飛と書いて、「あきと」と読むそうだ。

 シートバッティングの最初の打席。

 山本雅士投手(BC富山サンダーバーズ、元・中日)が投球練習をする捕手の後方に立って、投球フォームにタイミングを合わせながら、素振りを繰り返す。

 バッティングとは「タイミング」だ。なのに、耀飛のような「準備」をする選手がいない。

「なんて、怪力だ……」

 耀飛が真ん中速球を豪快に振り抜いた瞬間、バキッという音もろとも、真っ二つに折れたバットが三塁側ベンチの方向に飛んで、なんと、打球はライト前に落ちていた。

 そして、さらに、内角スライダーを三塁ゴロにした第2打席を挟んで迎えた第3打席だ。

 左腕・古村徹(DeNA)のクロスファイアーに差し込まれながら振り抜いたバットが、やはりバッキリ折れて三塁側ベンチ方向に、そして打球は再びライト前に落ちていたから驚いた。

 なんて、怪力だ……。

 その前の、やはりクロスファイアーを、耀飛は詰まりながらライトポールの右へライナーで持っていって、惜しくもファールになっていた。

 この選手、ファールでもしっかり呼び込んで、ボールを長く見てインパクトポイントを作り、フルスイングしている。力任せに振り回す「なんちゃってフルスイング」じゃない。

 きちんとタイミングを合わせて振っているから、自然とフルスイングになっている。だから、バッキリ折れてもライト前まで運んでいけるし、ファールや空振りでも、振り終わりで体勢に崩れがなく、背中を叩くほど振り抜けているのが、その証拠だ。  

打率330なのに…なぜ「戦力外」になったのか?

 それより何より、この選手のプレーや立ち振舞いには、ファームの長い選手にありがちな「サビ」のようなものが感じられないのがいい。

 この先も、自分に「野球」があることがわかっているかのような、当日の冬晴れの空みたいなスイング。だから、目を奪われる。

 そもそも、この選手がどうして「自由契約」になったのか…不思議に思っていた。

【次ページ】 「技術」よりも必要なもの

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